福島県教育センター所報ふくしま No.8(S47/1972.10) -019/030page

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表2 熱処理による試験片のかたさ
冷却法 S.15C S.45C
  熱処理前Hs 熱処理後Hs 熱処理前Hs 熱処理後Hs
水 冷 24.0 25.1 40.1 77.2
水冷後再加熱
(600℃)油冷
24.1 24.0 40.0 50.0
油 冷 24.0 25.2 39.0 43.0
空 冷 24.0 25.0 40.0 25.2
炉 冷 25.2 25.0 39.2 19.3

 ※ HSは5個の平均値を示す。
 ※ S46年度研修講座のデータとその補足実験値をまとめたものである。

 5. まとめ

(1) 焼入れ

 昇温時間,1時間,保持時間,0.5時間であるが,焼入れ済から油焼入れよりは水焼入れの方が硬化能が高い。また,S45Cは,S15Cより硬化能が大きい。硬度を必要とするハンマー,くぎ抜きなどの製作にはS45C以上の中炭素鋼を焼入れして使用することが適切である。しかし,この場合も表面処理前に焼きならしをするのが立前であり,特に強靱性を要求されるので焼きもどしを施す必要がある。

 焼入れの「コツ」は,臨界区域(焼入れ温度から火色消失点,Aγ´点)まで早く危険区域(マルテンサイト変態を生ずる温度範囲,Aγ")をゆっくり冷すことである。

(2) 焼もどし

 昇温時間,保持時間,各1時問であるが,硬さはS15Cでは変わらず,S45Cは減少している。

 鋼の熱処理については焼戻しはきわめて大切な操作であり鋼はどんな場合でも焼入れし放しで使ってはいけない。欠けたり,割れたりすることが多いからである。したがって必ず焼きもどしを行なって使用しなければならない。焼もどしは焼入れ直後に行なうことが原則である。

(3) 焼ならし

 昇温時間,保持時間とも焼入れ同様に行なったがS15Cで硬さが原材料より少し硬くなっている。

 焼ならしは,炭素鋼を標準状態にするためであって,組織を標準化するためではない。即ち加工の影響を除き,結晶粒を微細化して機械的性質を向上させる目的で行なわれる。即ち強靱な組織にすることができる。

(4) 焼なまし

 昇温時間,保持時問とも焼入れと同時に行なったがS45Cで硬さが原材料より減少している。

 焼なましは,軟化の目的で二段焼なまし,恒温焼なまし,球状化焼なましがある。従来の焼きたましは常温まで炉冷除冷を続けるが炉の循環的利用を考え,550℃位になったならば炉から取りだして空冷,もしくは水冷を行なって差支えない。

 この実験から加熱条件を一定にした同質材質の鋼材でも冷却速度によってかたさが異なることがわかる。また低炭素よりも中炭素鋼(S30C以上)が硬化能が著しく,したがって,ドライバー,ハンマーなどの製作には,中炭素鋼を用いなければならない。紙面の都合上,実例をはぶいた。


 小・中・高共通教材

           縫製に関する実験

                          第2研修部 佐藤清子

 1. はじめに

 被服製作の初歩として,小学校5年で布,糸,針の材料や用具を用いて,手縫いによる袋類と,ミシン直線縫いによる簡単なものを製作させている。その後,中学校で活動的な日常着の製作としてブラウス,スカートをはじめ,外出着まで生徒の発達段階に応じて基礎的要素を段階的にとりいれた製作がおこなわれている。更に高校題材へと展開されていく。製作にあてられる時間は少なく,その限られた時間内で,ひとつのものを完成させるためには,能率的,合理的縫製が必要になってくる。

 今回は縫製の合理化のために必要な基礎的実験を試みた。布を縫い合わせた縫い目のもつ強さは使用後に大きな影響を与えるものである。ブラウスの後袖付けがほころびたり,タイトスカートの後プリーツの縫い目の織糸ずれや,ほころびをよく経験する。

 被服製作指導にあたっては布に対し,どのような糸,


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