福島県教育センター所報ふくしま No.8(S47/1972.10) -022/030page

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 捨てミシンの方は写真でみられるように,デニムはミシン縫いの部分が3/4ほど剥離しており,ギンガムよ全部剥離してしまう。折り端ミシンは洗たく30回でも全然乱れなく縫いしろのしまつとして効果的である。

洗たく回数ごとのほつれの状態

 3) 手かがり1,手かがり2

  手かがりはほつれた糸が,かがり糸の中でとまり,ある程度効果はあるが,デニム,綿サテンのようなほつれやすいもの,洗たく機を使用するものは適当でない。能率面でも折り端ミシンの約5倍は,かがるのに時間を要する。

 4) ジグザグミシン縫い・ベビーロック縫いのほつれ  ジグザグミシン縫い・ベビーロック縫いは実験した縫いしろのしまつ8種の中で,最も完全度が高く,いずれの布においてもほつれはOに近い。これらのしまつの方法は,どんな布目の方向にも簡単に用いられるので,利用範囲も広く,効果的である。能率面からみてもベビーロック縫いは8種類の縫いしろのしまつのうち最も短時間で,40pの長さでは約20秒でできる。次いで捨てミシン,折り端ミシン,ジグザグミシン縫いの順になる。

 5. おわりに

 わずかな実験結果報告であるが,被服製作学習で,生徒に布地にあった針,糸,縫い方,縫いしろのしまつはどのようにしたらよいかを考えさせ,判断カをつけさせる指導の具体的資料として活用していただきたい。

 高校では,縫いしろのしまつと洗たくによるほつれなどは,家庭一般,被服1の洗たく実習の発展として,球庭クラブ活動などにとりあげさせるのもよいと思う。

 小・中・高の家庭科教育のすべての領域で消費者教育の面が強調されてきているが,既製服のえらび方について,品質や取り扱い表示を確かめるとともに縫製面にもじゅうぶん考慮するような賢い消費者としての目を養たいたいものである。


     統計的な考え方について

                         研究・相談部 津田俊晴

 現在の企業における統計的方法の活用の仕方から見ると,統計的方法の適用範囲は,ますます拡大されるであろうと考えられる。そして,この適用範囲の拡大は,当然教育研究の場でも,統計的取り扱い場面の要請がより強くたることを意味するであろう。そこで,研究の立場から,統計的な考え方について,以下に要約してみる。だいたい,科学の名に値するものは,その再現性に特徴があると考えられるので,再現性のない現象は,一般的にはそれを研究対象には選ばない。しかし,現代統計学の態度はこれと異なる。

 i.e.統計学は変動の中から有用な情報を導き出す方法を与えるものである。

 そして,その特徴は,生のデータ(raw data),統計的解析,意思決定の3つを三本の柱とするところにある。

 raw dataとは,単なる抽象的数ではなく,何らかの“もの"を表わす具体的な数で,人数,物の個数,測定値などのことである。統計的解析は,dataの本質的な特性,関係を集約し,空間的あるいは時間的に,より広い大きな集団について説明を与え,将来の行動を予言するpattenの決定を可能にする。

 しかし,多くの場合,われわれが手に入れる情報は,母集団からとり出された一部分のsamp1eであるのが普通である。ほんとうに知りたいのは母集団についての情報であるが,現実に知り得るのはsampleについての知識に過ぎない。したがって,統計的推測がどのくらい信頼できるかは,samp1eがどの程度まで母集団の情報を含んでいるかにかかっている。

 そのための,もっとも効果的なsamplingの方法は,random samplingの方法であることが知られている。raw dataが意味のある変動(Signa1)と誤差変動(noise)に分解できたときに,われわれは情報を得たことになる。情報の確実さは,signalとnoiseの大きさの比で測ることができる。このように統計的方法は不確実陛を十分狭い範囲にしぼって,行動のための最善の意思決定を下すことを可能にするものであ私しかし・忘れてたらたいことは,決定者の知識,経験,非科学的な直観なども間題処理では,統計約方法と共に考慮し匁ければならないことである。


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