福島県教育センター所報ふくしま No.8(S47/1972.10) -023/030page
実験学校の紹介
小規模小人数学級校における教授組織に関する研究
〜安達郡安達町立下川崎小学校の部〜
研究・相談部長 内藤善次
1. 研究の概念
現代社会の知識の拡大・高度化は,生産構造や生活様式を改変している,このような現象は当然学校教育にも反映し,教育内容,教育組織・方法・技術の抜本的な改善に迫られている。特に小規模小人数学級校においては役割の分担や遂行の過程などで多くの制約を受けざるを得ない。こうした現状からして,組織体としての教育活動の原点にかえり,「目的のもと,成員相互のコミュニーケーションを有し,共同の責任と相互の役割をもつ統一体」としての機能を再検討するとともに,学校教育が集団形態で行なわれるが,個人として成立させなければならないという理念から教育活動の再吟味が必要であろう。
次にその具体的項目をあげることにする。
(1) 学年(学年団)組織体制の強化により,学校経営の機能発揮をはかる。
従来も学校教育は,学校・学年・学級と組織立てられているが,機能的には,経営方針,施策・業務などが学級に直結し,学年(学年団)の立場は,範囲外におかれたようである。この学年(学年団)の立場を再検討し,指導・業務管理の推進母体とし,協力組織体制により効率を高める。
(2) 弾力的な学級集団の再編成により,個別化・集団化をはかる。
子どもの発達段階・経験に応じ,教材内容に即して,組織的に既成学級を弾カ的に取り扱い,大集団・小集団に再編成し,ひとりひとりの子どもの学習成立をより確実にする。
(3) 協力体制での分業・協業により,本質的な授業を展開する。
教師の協力による単元指導計画の共同作成,授業における役割分担としての分業・協業により,集大成としての教育効果を期待する。
2. 研究の視点
学年(学年団)経営を推進母体とし,学習指導・生徒指導はもちろんのこと,校務も学年(学年団)を単位として分掌する協力組織体制において,次のような具体事項について究明しようとする。
(1) 単元指導計画の共同作成
実際の授業のための1時間ごとの授業案を単元指導計画とし,単位学年・あるいは近接学年による学年団で共同作成する。そのため学年(学年団)の組織を分業・協業が可能であるよう配慮するとともに,その作成が勤務時間内に位置づけられるようにする。
(2) 教材,発達段階・経験に応じた単位集団の再編成
教科の性質,あるいは教科内容に応じ,子どもの発達段階・経験によって,既成の学習集団を合わせて大集団にしたり,グループに分けて小集団にしたりすることができる。そのためには,単位学年の教師が協力して,生徒指導が行なわれる体制にする。
(3) 教師の特性を生かしたティーム・ワーク
効果的な授業として,教師の特性を生かし,教授過程における段階的な確かめや,教育機器の導入を可能にするため,主となる教師,援助する教師といった役割で,主体的に分担し,協力し合って,本質的な授業を展開する。
この役割は固定したものでなく,教材の内容によっても交替するなど,弾力性をもたせ機能発揮をはかる。
3. 研究の領域
研究の領域を次のようにする。
(1) 協力組織体制における教授過程と役割分担のあり方
(2) 小規模小人数学級校における鶴力組織体制による役割分担とその活動
今回は,(2)についての実践過程のあらましを紹介することにする。
4. 研究のねらい
「小規模小人数学級校における協力組織体制による役割分担とその活動」
小規模小人数学級校においては,教科の性格およびその内容によっては,集団環境構成面から本質的な授業の展開が困難なものがある。その障害を除くため,近接2学年を合併しての授業が考えられる。しかしこのことは