福島県教育センター所報ふくしま No.10(S48/1973.3) -002/021page
教育内容・方法に関する研究,資料提供
〜小・中・商,教材研究を中心として〜
高校教材
マグネットダイオードを用いた磁束計の試作
教育センター 柴田宣教
福島高校 亘理尚寛
従来高等学校物理における磁気教材の実験は定性的にしかとりあつかわれてい柱かつたが,磁界の概念をよくは握させるためには定量的な測定実験が必要ではないかと考えられる。絶対的な測定とまではいかなくとも傾向だけを調べる半定量実験でも考えたいものである。
磁界の強さを測定する用具としては,半導体ホール素子を用いたものが市販されているが,数万円もするものであり,しかも感度がもう一つ不足である。又授業に手軽に使用できるものとしては,PSSCの電流天びんが紹介されているが,これも大き恋電流を流して使用しなければならないし,測定値のばらつきも大きい。
捧磁石の極からの距離による磁界の強さの変化や,電流によるコイルの中の磁界の強さの変化など手軽に測定する方法をいろいろ工夫してみた。昨年は磁界の中で小さなコイルを回転させ,コイルに生じた交流電流を整流し,μA計で読みとる方法を紹介したが,今年はソニーが開発したマグネットダイオードを入手できたので(2,250円)これを用いた磁束計を試作してみた。大変具合が良いのでここに発・表する。
ソニーマグネットダイオードの原理は<図1> に示したように,P型及びN型半導体の問に難導体があり,Nを出た電子は十に引かれPに至るわけであるが困難であり,わずかしか電流を流さない。しかし紙面に直角方向の磁界を裏側から紙の表の方向にかけると,電子は矢印のように曲がり導電帯に入り込むので容易にPに達することができ,電流は大きくなる。又反対向きに磁界をかけると電流は減少する。ここで使用したダイオードMD-230Aはこの素子が2つペアで<図2> のように組込まれており,これを紙面に直角な磁界中におけば,P1NIは抵抗を減じ,P2N2は低抗を増すことになる。
1. 簡易磁束計の試作
このダイオードを<図3> のように組み,可変抵抗を調節してμA計の電流を0にしておく,ダイオードを磁外の中に入れれば,磁界の方向・強弱によりμA計は左右に振れる。電源6V,抵抗は5KΩ,可変抵抗1KΩ,検出用のメーターは中央指針型50μA計を用いて測定した結果はつぎのとおりである。
1A流して100AT/mの磁界を作るヘルムホルツコイルを用いて,電流と磁界の関係を調べた。
コイルを流れる電流A 0.5 1 1.5 2 検出用のμA計のふれ 3 6 9 12 コイルを流れる電流A;0,511.52 検山用μA計のふれ;369.I2
これをグラフに示したのが<図4> である。電流の強さすなわちコイルの作る磁界と,検出用メーターの読みが比例していることがわかる。したがってこの装置が磁界測定に十分使えることがわかる。
長さ15pの角型棒磁石にダイオードを近づけて測定した結果がつぎの表である。