福島県教育センター所報ふくしま No.10(S48/1973.3) -004/021page
つぎの<図8> のグラフAは板状磁石での実験結果でありグラフBは比較のための捧磁石での実験結果である。板状磁石の場合の磁界は距離が近づくと急激に大きくなるが遠距離ではかえって弱いことがわかる。板状磁石ではむしろ距離の3乗の逆比例に近い結果である。もっと近い距離での測定は検出メーターがスケールアウトするので測らなかったが,板状磁石の極は表面に近いところにあるので,鉄を引きつけるとき鉄を極にすぐ近いところまで持ってゆくことができるので,引く力が強くなるものと考えられる。
3. 使用上の問題点
感磁部としてマグネットダイオードを用いた測定器なので,半導体につきまとう温度による抵抗の変化が問題になる。測定中にマグネットダイオードの温度が変化すると,検出用メータ一の零点も,指示値も変わってくる。10mAぐらいのメーターを用いてする実験ではあまり苦にならないが,1mA以下のメーターを用いた弱い磁界の測定の際は実験中の気温の変化も苦になる場合がある。したがって絶対量の測定には不適当であるが,一時間以内に完結する半定量的実験には十分使えるようである。
なおこの増幅器つき磁束計は,本年度の高等学校実技講座に製作して好評をいただいたことをつけ加えておく。
中学校教材
中学校化学領域におけるエネルギー概念の指導
第2研修部 佐久間善克
中学校における化学領域の指導はかなりよく行なわれ原子,分子的な考え方を持ってきている。すなわち,その学習は次の2点を中心に展開されてきた。
1 化学変化に際し,何が反応し生成物質は何であるか,といったマクロ的な取り扱い。
2 化学変化を,原子,分子,イオンの面から考えるミクロ的な取り扱い。しかし,エネルギー的なみ方,考え方はほとんどなかったと思う。
化学は,物質の特性,構造と変化を主たる研究対象としているので,上記のように,マクロ的,ミクロ的に物質の変化を中心にしてきたのには,それなりに理由はあったと思うが,これだけでは研究の方法が片手落ちになり,十分に化学的物質観を育てることができない。すなわち,化学変化の有無,反応の方向性,物質の構造・反応性などを考えるとき,エネルギー的考察を抜きにしては考えられないのである。
今回の中学校における化学教育の現代化の中で,物質概念と並んで基本概念の二大柱として,「エネルギー概念」が取り上げられたのも,その辺に原因がある。
しかし,中学生が対象なので,取り扱う限度もあるし更に,教材として取り上げる素材の配慮も必要である。高等学校の化学にみられるように,エネルギーに関係したことを単独の単元(例えば,化学変化とエネルギーなどのように)にするのは無理なので,従来の化学変化を取り扱う中に,エネルギー的考察を加味する程度で十分で,特定のエネルギーの為の授業を組まなくとも,中学校3年間を終了するときに,エネルギー的なみ方,考え方の目標に到達しているように指導していくべきである。このような中学校の基礎的な指導を基に,高等学校では,より高次で広範囲なエネルギー概念として,反応熱,熱化学方程式,更に,ヘスの法則でエネルギー保存の概念を学び,反応速度と平衡,乱雑さ,分子の構造と性質,化学結合とエネルギー,イオン化エネルギーなど多岐にわたって繰り返し学習していく。このように,高等学校の指導との関連を念頭においての,小・中・高校と一貫したエネルギー的指導が化学教育の本筋であリ,そのような教育が要求されている。
エネルギー概念に関してどんなことを教えたらよいのか。一般的には次の事柄である。
1 エネルギーにはいろいろな形態がある。
2 諸形態は相互に変換しあう。
3 熱もエネルギーの一つの形態である。
4 エネルギーは保存される。これらを使って白然現象の説明に入ってくると,
5 自然変化には,エネルギーの出入があること。
6 自然現象の考察には,エネルギーの考え方がいたるところに出てくること。しかし、これらの概念は中学生にとって灘解なので,前述のように限度を考慮すべきであるが,スバイラルに繰