福島県教育センター所報ふくしま No.10(S48/1973.3) -006/021page

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からこの測定実験で十分である。むしろホヤに触れてみれば熱くなっているし,装置の上に手をかざせば熱い空気が逃げていることから,実際は測定値以上の熱が発生していることを理解させるようにもっていくことが大切である。

 変化にあずかる物質の質量と,エネルギー量が比例関係にあることをとらえさせなければならない。その為に質量の変化量に対する発熱量を測定するのであるから、途中で質量と水温を同時に測定する。この時一回ごとに消火して質量と水温を測定するのは操作が繁雑になり,誤差も大きくなるので本実験のように,アルコールランプをてんびん上に置いて,質量変化を連続測定する。

 エチルアルコールの場合と同じ方法で,メチルアルコール,ローソクの燃焼による熱エネルギーを測定する。条件統一のため同じ簡易アルコールランプを使うが,エチルアルコールとメチルアルコールを完全に交換するためメチルアルコールを入れて,しばらく燃やしてから測定する。ローソクは太さ1p長さ5p位にして直径5p位のかんのふたに釘をうったのに立てて測定する。

 この実験の留意点として次のことが考えられる。
 1. 炎の大きさは余り大きくしないこと
 2. ホヤを深くしすぎないこと,熱がこもり,アルコールの場合は芯おさえと試験質の間に引火し,発熱量が一定しなくなる。ローソクの場合はロウが多量に融け,炎が大きくなり不完全燃焼をおこす。
 3. ローソクの場合炎の長さに従って,かんの高さを調節する。(ローソクが次第に短かくなる)

   2 物質の状態変化に伴う熱量の測定

 目的 1. 粒子の離散にはエネノレギーが吸収され,集合のときにはエネルギーが放出されることが説明できる。 2. 状態変化に伴う熱エネルギーは,燃焼によって発生する熱エネルギーより小さいことが指摘できる。

 アルコールの気化熱測定で問題になるのは,外部から一定の大きさの熱量を一定時間補給することである。新しい理科教育や当センター所報にも方法は書いてあるが,ここでは,ニクロム線を用い電流による発熱を利用した。

 装置(下図参照)容器はサーモカップ(発泡スチロール製200t)2個を重ねる。ニクロム線(200W)温度計方法 1.一方の容器に水1009,他方にエチルアルコール50gをはかリ取り,液温を計る。

図4 気化熱の測定装置
図4 気化熱の測定装置

 2. 200Wニクロム線を図4のように直列に入れ交流60Vをかける。

図5 気化熱の測定
図5 気化熱の測定

 3. アルコールが沸騰してから約10分間電流を流しアルコールを気化させる。その後アルコールの質量を測り,気化した質量を求める。

表4
  エタ 
ノール
メタ 
ノール
水の温度差 △Tw 42.0度 38.0度
アルコールの温度差
 △TA
56.7度 40.5度
気化したアルコール
の質量 m
11.5g 10.9g
気化熱   cal/g  205  252
理論値   cal/g  200  263

 4. 同じ時間内の水温上昇を求め,水に与えられた熱量を計算する。これと同じ熱量アルコールに与えられたと仮定して気化熱を求める。

計算式 気化熱を XCal/gとする
 エタノール50×O.65×△TA+m×X=100×1×△TW
 メタノール50xO.60×△TA+m×X=100x1×△Tw
  但し エタノールの比熱0.65ca1/g deg
     メタノールの比熱0.60ca1/g deg
     水の比熱  1.0ca1/g deg

 測定値のグラフを図5に,上式で求めた結果を表4に示した。

 いくつかの仮定か入るが,装置,操作共に簡単であるし,良い結果が求められる。

この実験の留意一点として次のことが考えられる

 1. ニクロム線の抵抗を同じにする。同じ200Wでも少しずつ違っており,発熱量に影響が出てくる。
 2. 電圧は60〜70V(交流)が適正のようである。それ以下では水温のグラフが直線から大きくずれ,時間もかかり過ぎる。高いと沸騰が激し過ぎる。
 3. 水の量は容器の大きさから100身がよい。水は沸騰させない方が熱量計算上望ましい。長い時間やる


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