福島県教育センター所報ふくしま No.11(S48/1973.6) -003/025page
知識過程を重視するか,両方たいせつにしようとして登場したのが発見学習である。即ち増大する教材内容を精選・整理しなければならないという考え方と,転移カのある学力を育成しなければならないという二つの考え方である。教材内容を精選していくためには,その本質を見きわめ,本質をとらえることによって,その教材の全体構造がとらえられるようにしておく必要があろう。また,このような本質的な知識を真に身についたものにするためには,いいかえると転移力のある学カとするためには,発見的な,そして創造的な学習方式が樹立されなくてはならないという考え方が生まれてきたのである。
2. 発見学習の性格
知識爆発の現代の教育要請にこたえようとする方法原理である発見学習は,知識過量にたえかねて,雑多な知識をとりはらい,本質的な知識構造を洗いだすことが,一方では重要である。つまり知識結果を重視する。それとともに,この本質的な知識構造を,知識結果として与えるのでなく,発見的に習得させることが他方では重要である。つまり知識過程を重視する。こうして内容と方法との両者,または知識結果と知識過程との両者,これらのかかわりを,現代の発見学習は踏まえようとしている。
つまり,「基本的事項を徹底的に指導する。」基本的な知識結果と知識過程との結合を別のことばでいうと,「教材構造と発見学習との結びつき」といいなおすことができる。
1 発見学習の意義
「子どもが主体的に学習の対象に取り組んで,解決の見通しをみずから決定し,情報を分析したり,総合したり,順序を変えたりして処理し,対象のもつ意味や原則を発見していく過程である。」
したがって発見学習では,子どもが学習場面の中でみずから問題をは握し,解決に必要な情報を吟味して仮説を立て,解決に至る活動の過程をとることとなる。
2 発見学習の特質とねらい
発見学習においては,構造化された知識,すなわち本質的知識に子どもが結びついた時に学習が成立するのである。したがって発見学習は,主体的に学習を進める態度や問題を解決するという方法的な側面も大切だが,何よりも学習内容を分析し,教材の本質をつきとめることによって成り立つのである。しかし忘れてはならないことは,教材の客観的な価値とともに学習者である子どもにとってどのような価値があるか十分吟味しなければならない。学習者は既有の経験や知識をもっており,新たに発見しようとする知識は教材の本質といわれるものとどのように結びつくかを研究する必要がある。学習者が新たな知識を発見し,さらに発展させることが可能ならば,発見学習が成立したといえるのである。
以上のように発見学習の性格をふまえて,そのねらいを次の2点におく。
(1) 各々の教科・教材について,本質的な知識を獲得させることである。
(2) ある知識の獲得の過程をくぐらせることによって,問題を解決して行く能力や態度を身につけさせることである。
3 創造性の育成と発見学習
創造性の育成とは,「すでに存在するいろいろな素材から新しいものを考え,生みだすこと」といわれたり,「新しくなくても,古い,ものの考え方や内容を尊重しながらしだいにこれを改造して行く」ともいわれている。前者の場合は特別な才能による創造の場合にあてはまるし,後者の場合は自己実現の創造ということである。なおその他,創造性の育成についてはいろいろな研究がたされている。わけてもデューイは「未来への先見」を尊重する反面「過去の経験」を重視している。それは,ある予見に基づくとともに既知の事柄を統合して行くところに創造があると考えられる。
したがって創造性の機能的特性は次の2点にあるといえる。
(1) 創造的思考活動は,既知の経験や知識を基礎として行なわれること。
(2) 経験や知識は目的や見通しに基づいて,結合させ再構成させること。
第1のめざすところは,枝葉の知識・技能より,対象のもつ本質をわかろうとすること。この本質がわかればそれによって転移カや創造が可能になるという考え方である。また,この学習では知識を自ら発見していく過程をくぐらせ,獲得された知識そのものが生きて働く学力として,学習者に定着するものである。
第2のめざすことは,知識・技能の獲得過程をだいじにし,問題解決過程をたどらせるということである。本質的な知識が獲得されたとしても,それだけでは創造性は養われない。いわば知識・技能は創造活動の潜在エネルギーであり,このエネルギーを駆使する手続きこそ重要なのである。発見学習ではすでに述べたように問題の岐路に直面した時,自ら解決的な思考を働かせ,仮説を立て,これを検証していくという問題解決の過程をたどらせる。このような発見過程の経験によって習得される課題解決の諸能力(知識・技能)が,創造活動を促す能力となることが期待される。また,課題をとらえ,解決し,発見する喜びが,創造への興味と関心を増進させることも期待されるのである。したがって,発見学習を営むことは,とりもなおさず創造的な学習に発展するものと見なすのである。