福島県教育センター所報ふくしま No.11(S48/1973.6) -005/025page
授業システム設計における学習目標
−学習目標の分析・評価を中心として−第1研修部 嶋 田 二 郎
教育工学を簡単に定義するならば,教育をシステムとしてとら完設計・運用する技術学であるということができよう。
教授・学習過程のシステムは,狭義の教育システムの中核をなすもので,ふつう授業システムと呼ばれている。
教師が授業を行なうということを,教育に対するシステム・アプローチの立場からみるならば,授業システムの設計(デザイン)をし,それを運用することとみることができる。
ところで,授業システムの設計・運用における学習目標や評価は,どのよう底意味をもつものであろうか。とくに,授業システムにおける学習目標の設定について考えてみたい。そこで,まず授業の特性をシステムという観点から考察することが必要となってくる。
1. システム
システムという言葉は,ギリシャ語の「有機的組織をもつ全体」ということから出ているといわれている。また,ウェブスター大辞典には,「ある共通の目的に奉仕する多種多様な部分から形成される一つの複合体」と述べられている。この定義には,二つの基本的な考えが含まれている。その一つは,「システムの個々の構成部分は,それぞれ異なるものである」ということであり,その二は,「部分は共通の目的に奉仕する」という意味で,「部分の集まりは一つの統一体をなしている」ということである。
ところで,システムはつぎのような一般的性質をもっている。
一般にシステムを定義すると,「所定の目的を果たすべく選定され,配列され,連関をもって動いていく一連の構成要素の組合せ」ということになろう。
システムにおいては,システムを構成する諾要素が複雑な形で結合され,有機的に関連し合ってシステムの目的を達成するために作用している。しかもその個々の構成要素はそれ自体一つの独立した機能をはたしている。
システムの構成要素の最小単位をモジューノルという。したがって,すべてのシステムはモジュールの集合であると考えることができる。しかし,モジュールを考察の対象として選ぶよりも,サブシステムを考察の対象としたほうがよい場合がある。一般にサブシステムとは,システムを最適分割したものである。システムの目的の達成のために,サブシステムはそれぞれ目的と機能をもつ。個々のサブシステムは,人間・機械・情報などをモジュールとして成立っている。
これを図示すると,つぎのようになる。
1.秩序ある全体であること
2.目的をもっていること
3.入出カがあること
4.フィードバック機能をもつこと
2. 授業システム
授業システムを設計するとき,多くのサブシステムが考えられるが,そのおもなものはつぎのとおりである。
○教授システム
○学習システム
○ハードウェアシステム
○ソフトウェアシステム
そこで授業システムが,システムの一般的性質をどのようにそなえているかを考えると,つぎのようになる。
(1) 秩序ある全体であること
ここでいう「秩序」とは,構成要素間の関係の意味である。したがって,「秩序ある全体」とは,「構成要素間の関係をもとにして,全体を構成している」ことを意味する。授業システムにおいては,サブシステムとしての教授システム,学習システム,ハードウェアシステム,ソフトウェアシステムから,全体が構成されている。
(2) 目的をもつこと
授業システムの目的は,学習者に学習目標である知識や技能などを習得させることである。授業システム