福島県教育センター所報ふくしま No.11(S48/1973.6) -007/025page

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業システム設計をする場合,システムの目的として,アウトプットとしての変換された学習者の状態を明確には握したければ,システムの設計は困難になってくる。そこで授業システムの目的を,学習者に最終的に形成される行動として記述することが必要となってくる。授業システムの目的を学習者の行動として表現するものは,「目標行動」と呼ばれている。

(1) 目標行動の表現方法
 それでは,目標行動をどのように表わしたらよいだろうか,プログラム学習の「目標の明確化」の手法は,有効な手がかりをあたえてくれる。

1. 目標が明確であるということは,学習の結果,学習者がその目標に到達したかどうかが客観的に観察できるということである。
 したがって,学習者が目標を達成したときに示すことのできるオバートな行動(あらわな外部から観察できる行動)の形で示されるべきである。たとえば,"〜暗誦できる。〜の共通点を指摘できる。〜を選び出すことができる。〜を操作できる。"などで,"知る。理解する。気づかせる。養う。関心をもたせる。"などのようなカバートな行動(外部から観察することのできたい表面にあらわれない行動)としての表現は避けるべきである。

2. 学習者が目標に到達したということを,どのような条件や規準のもとで期待しているかを明らかにしなければならない。
 目標行動に規準をつけるということは,それがどの程度に可能になればよいかを明らかにすることである。規準としては,たとえば,
 ○時間〜100mを,14秒以内に走ることができる。
 ○速さ〜2分以内に,2回繰り上がりの加法の計算をすることができる。
 ○誤差〜誤差3 mm以内ではかることができる。
目標行動に条件をつけることは,たとえばつぎのような場合がある。( )内が条件
 ○(二組の対辺カミ平行であることを利用して)平行四辺形をかくことができる。
 ○シラス台地の農業の特色を,(作付品種・作付面積・単位収益・農業人口・農業収入などと関連させて)説明できる。
 ○乾電池1個,豆電球2個,スイッチ1個を,(配線図を見ないで)並列につなぐことかできる。


5. 授業システム設計における目標行動の分析

  一般に授業システムの目的である目標行動は複雑な行動であり,それが形成される以前に多くの基礎的行動の形成を必要とするものである。したがって,目標行動の設定のつぎに行なわれることは,目標行動形成にとって必要かつじゅう分な基礎行動をみい出すことである。貝標行動を成り立たせている要素を分析していくのが,「目標行動の分析」である。
 この目標行動の分析には,いくつかの方法が考案され実践されているが,代表的なものは,論理分析,行動分析,資料分析である。つぎに,目漂行動分析の対比をしてみる。
      方法

段階

論理分析 行動分析 資料分析
第1段階 下位目標行動の抽出 熟達者の学習行動の観察・記録 学習項目のあらいだし
第2段階 相互関係図の作成 要素行動の分析と整理(オバートな反応) 学習要素の分類・整理
第3段階 形成関係図の作成 システムフローチャートの作成(構造図) システムフローチャートの作成(構造図)

 論理分析は,目標行動を形成可能とする下位目標行動を論理的に求め,しだいに精細に単位行動をみい出していく方法である。この目標行動の形成にとって必要かつじゅう分な基礎となる行動を下位目標行動という。これをみい出していく方法を論理分析という。下位目標行動それぞれの関係を相互関係図といい,全体の関係を図にしたものを形成関係図という。形成関係図は,目標行動を支えている下位目標行動相互の全体的な関係を表わしたものである。
 行動分析では,目標行動を設定し,その目標行動をベテランに行なわせそれを観察して記録し,それを外観的,内面的行動の両方の要素行動に分析し,その要素行動を易から難へ,単純から複雑へと配列してシステムフローチャートを作成する。
 資料分析は,種々の教科書,参考書,実践記録をもとにして,あるいは教職経験者の意見によって,目標行動を成り立たせていると思われる学習項目をできるだけ多く洗い出していく。そして,その学習項目を吟味し,目標行動の要素と考えられるものだけを整理し,分類して配列する。


6. 授業システムの評価と目標行動

 システムが設計,運用されてから,経済性,信頼性,柔軟性といった面から検討を加えて評価することを,そのシステムを評価するという。システムには目的と機能があり,それがどの程度正しく発揮されているかが,システム評価のポイントである。
授業システムにおいては,インプットである学習者が目標行動を形成して,アウトプットに変換したかということを測定することが評価のポイントである。
 目標行動という形で授業システムの目的をは握することは,授業システムの評価を容易にする。なぜならば,授業システムの目的を目標行動のかたちで示すことによって,目標は明確になり,目標と評価の一貫性がはかられ,授業システムの評価としてのインプットとアウトプット間の変換量の測定を可能にするからである。


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