福島県教育センター所報ふくしま No.11(S48/1973.6) -008/025page
小 学 校 教 材 算数・数学科における発見(探究)学習のあり方
―― 思考力を育てることを中心として ――第1研修部 戸 田 満 夫
1. 探究する週程の重要性
アメリカの初等中等学校における自然科学教育改革の基盤となった「教育の過程」(J.S.Bruner・TheProcess of Education)の記述の中に,「物理を学習している生徒は,いわば物理学者荏のであって,その生徒にとっては物理学者がするように物理を学習することのほうが,ほかのなにかをするよりも容易である。」とある。「物理学者がするように物理を学習する。」ということは,探究していく過程を重視するということと思われる。このことは学習指導要領(中学校)理科における第1目標の総括として,
と記述されている,この探究の過程は,
自然の事物,現象への関心を高めて,それを科学的に探究させることによって,科学的に考察し処理する能カと態度を養うとともに,自然と人間生活との関係を認識させる。このため,
1 自然の事物,現象の中に問題を見いだし,それを探究する過程を通して科学の方法を習得させ,創造的な能力を育てる。
2〜3省略
と表現されており,この科学的に探究する過程を通しての科学の方法の習得は,Learning by discoveryとLearning of discoveryの両者が包含されるものと解釈できる。つまり,対象の中に,ある種の科学上の構造(概念・法則)を発見することにより,もしくは探究することによりつかみとることと,発見するあるいは探究することを学ぶ技法訓練との二通りである。この探究の過程は同じく指導要領の各分野の目標および内容 [第1,第2分野] 1目標の(1)において,
1 問題の発見―> 2 情報の収集―> 3 推論―>
4 仮説の設定―> 5 検証―> 6 法則性,規則性の発見と現象の解釈。
の6段階をたどることを明示しているように思われる。科学の方法には,観察,測定,分類,推論,予想の記録やCommunicationなどの単純なものから,情報の解釈,モデルの形成,仮説の設定,条件の統一などといった高度な創造を伴うものまでの幾つかの成分要素から成りたっていると考えられる。
これらの要素は,いろいろ複雑に組み合わされて研究が進められ,反復してくり返されるのである。
指導要領によって明示された探究の過程を上記の諾要素とのかかわりあいによって,一般的な過程として組み立てると,
1.問題の発見
2.問題の中心課題のは握
3.解決に必要な情報資料の収集と分類,整理
4.仮説の設定
5.仮説の検証
6.検証実験から結論の発見
のようになると思われる。この過程は,教授,学習という一連の活動のなかで児童・生徒の能力開発として見逃せない重要さを含むものと思われる。
2. 探究する過程を重視した算数・数学指導過程の試み
理科学習における科学的方法は,指導要領の目標および内容としてかかげられ,探究の過程は理科においてのみ成り立つように思われがちであるが,このことは決して理科の専売ではないはずである。広く自然科学における教育を考えるなら,算数・数学の教育においても成立してよいはずである。したがって探究する過程を重視した算数・数学の指導を,探究過程の一般化にアプローチした試みをしたい。
そのためにはまず理科における探究する過程の一般的方法を吟味し,算数・致学における探究する過程に組み変える必要がある。
探求の過程 ――
算数・数学における探求の過程
1 問題の発見――――現象的放構造のは握