福島県教育センター所報ふくしま No.11(S48/1973.6) -011/025page

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小 学 校 教 材

「イネの育ち方」についての一実験

―― 資料活用を中心として ――

第2研修部   本 田 孝 

1. はじめに

 授業の過程で,児童が間題を発見した場合,教師はその問題を探究的に解決させようとして予想をたてさせるとか,実験の方法を考えさせるとかして,児童が自分の力で解決できるように活動の場を設定してやったり,解決の方向性を見出せるような助言をしてやったりする。これが理科における一つの探究のさせ方であろう。そこで問題は,児童が発見した問題に対してその結果がどうなるのかとか,実験の方法はどのようにすればよいのかということを,教師は知っていることが必要である。教師が知っていて探究させるのと,知らないままに試行錯誤的に探究させるのとでは,探究のさせ方に大きな違いが出てくるからである。
 探究的に学習することの目的は,できるだけ無駄のない授業の積み重ねによって,他人の助けをかりずに自カで問題を発見し,解決できるように,探究の方法をしっかりと身につけさせることである。
 ここでは,5年生の「イネの育ち方」の学習内容の中から,以上述べたようなことから,授業中問題として出そうなことを2つほどとりあげてみた。


2. イネのたねをまく水の深さから,よいたねを選ぶまで

 (T・P)イネのたねをまいて育ち方を調べよう――> (T)イネのたねは水の中にまくがなぜ発芽するのだろう。――> (P)ダイズは水中で発芽しなかったのに(5年発芽の学習経験から)イネは水中でも呼吸できるのだろうか。――> (P)呼吸できるとしても,水の深さとは関係ないのだろうか。 どのくらいの深さが発芽によいのだろうか ――> (T・P)いろいろ在深さにまいてみよう。→(実験)小水槽を3〜5個用意して,水深1〜1cmのものをつくり,それぞれに,50〜100粒のイネをまく。・・・・・話し合いによってきめる。(P)あっ,浮いているたねがあるよ。水の中ごろで止まっているたねもあるよ。浮いているたねの芽はきっと出ないよ。――> 児童(P)のいろいろな考えは,問題として残しながら,そのまま継続観察にはいる。やがて発芽してくるとその差に気づいてくる。――> (P)水は浅い方が芽はあまり伸びないよ。浅いと根はよく伸びるよ。水は深い方が芽は伸びるが根はさっぱり伸びないよ。深いほど,芽は弱々しく細いよ。――> (P)水の深さは1cmから3cmくらいがいいようだな。――> (P)同じ深さでも,芽の伸びの悪いのがあるよ。芽が出ないのもあるよ。浮いているたねは全部芽が出ないよ。たねの中には芽の出ない悪いたねもあるんだね。――> ここで, 水の深さが発芽にたいせつな要素である ことがわかると同時に,たねは, よいたねを選んでからまいた方がよい ことを発見する。

 (T・P)イネのよいたねを選んでからまこう。――> (P)よいたねとは,どんなたねだろう。――> よいイネのたねは養分になる部分が多い(4年のいもの育ち方,5年の発芽の学習経験から)よいたねは重い。(前時の学習内容から)
 よいたねは粒が大きい。押してもつぶれない。(T・P)よいイネのたねはどのようにして選んだらよいだろう。――> (P)小さすぎて重さは量りにくい。もみの形がよく,大きくとも重さがわからない。かんたんに重さが比べられる方法はないだろうか。(P)水に沈めば重いはずだよ。――> (P)水に沈んでも芽の伸びの悪いたねがあった。水に沈んだのでも悪いたねがあったよ。――> (P)水よりも,食塩水に入れた方がもっと重いたねだけが沈むよ。(4年のもののうきしずみの学習経験から)(T・P) 食塩水といっても,どのくらいの濃さにすればよいのだろうか。
 ここで児童の思考は壁につきあたる。結局,各種濃度の食塩水をつくって調べてみる以外に方法はたくなる。そして,それぞれを,前時に学習している発芽のよかった水深にしてまきつけ,発芽比較をしたうえで,
 ○沈んだイネは,みなよく発芽する。
 ○浮いたイネの中には発芽しないものが多い。
 ○浮いたイネはたとえ発芽しても,沈んだイネよりも成長が悪い。
 という3つの条件に合ったものをみつけ,そのような結果の出た食塩水の濃度ならば,よいイネのたねを選べるという結果を得ることができる。 そこで,あらためて最もよい濃度の食塩水をもちいて


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