福島県教育センター所報ふくしま No.11(S48/1973.6) -014/025page

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中 ・ 高 校 教 材

「太陽の動き」を例としたウェット・ラボとドライ・ラボ

―― 思考力を育て,創造的な発想を促す教材・教具の開発を中心として ――

第2研修部   渡 辺 専 一 

1. はじめに

 中学校・高等学校において,特に天体領域の指導には困難を極めている。その原因としてデータを得るための観測設備の不足ばかりでなく,観測のための時期や時刻(恒星の動き,月の動きの観測)の問題が指摘できる。そこで,授業の中で教師が直接に指導できる分野は,おのずから 太陽の特性,およびその動きなどの観測とその結果の処理 が中心とたらざるを得ない。
 もちろん, 「宇宙における地球の環境」(高校),「地球をとりまく宇宙」(中学校)の概要を総合的,かつ空聞的には握するためには,「恒星の運動の規則性」や「惑星運動」,「各垣星自体のもつ特性」などをも観測の対象 にしなければならないことは論をまたないが,太陽を中心とした学習が発展して所期の目的を達成できるものと考え,ここに述べるものである。
 さて,学習の深め方の程度の差はあれ,小,中,高校一貫して見られる「太陽の動き」の観測とその結果の処理と発展についての一方法を述べるわけであるが,特に

図1半円板(白作)の製作図
(材質,硬質,塩化ビニル板,1o厚を使用)
図1半円板(白作)の製作図

「太陽の南中高度の年間の変化(発展して地軸の傾きの理解)」を理解するために特徴ある時期(春・秋分,夏至,冬至付近の観測)に観測がおこなわれ液ければならない。このために一年に2〜3回透明半球上に太陽の運動の経路をプロヅトする作業が実施されなければ意味をもたないし,思考を進めることができない。
 そこで,この学習の中に ドライ・ラボ的な学習形態 をとりいれてはどうかと思い,筆者が実施した方法を紹介したい。


2.「太陽の動き」の観測とその結果の処理

 中学校においては,透明半球をもちい,高校では「透明半球」もしくは「棒時計(ノーモン)」をもちいて,前述のように年間の特徴ある時期を選び,観測を実施し,何度か実施した資料をもとに,1.(マル1)目の出の位買,方位,時刻,2.(マル2)南中方位,時刻,3.(マル3)同の入りの位置,方位,時刻,4.(マル4)太陽高度の変化,5.(マル5)南中時における時期を変えた場合の太陽高度の変化在どをは握し,地球の自転や公転,および地軸の傾きなどを推論するわけであるが,ここでは特に,透明半球による 太陽の動きの具体的な測定法,結果の処理法 については1972年,教育センター所報第6号に詳解してあるので,触れない。


3. ドラィ・ラボの併用と効果

 高校(中学校も含む)理科,特に地学領域においては指導要領の改訂とともなって,新しい,しかもグローバルな現象を把えようとする内容が多くなり,生徒自身の目でそれらの現象を直視することが不可能な領域も多くなった。ここにドライ・ラボ的狂学習形態が生ずるわけである。
 しかし,ややもすると誤解を紹き,講義中心の学習形態を連想するむきもあるが,多量に準備された(目的により)ものをもとに探究的に思考を深め,探究の方法を獲得していく点ではまったく変わりはない。
 ここでは,「太陽の動き」を一例に,いわゆるウエット・ラボの中に効果的にドライ・ラボをとり入れていこうとする,いわばドライ,ウエットの中間的な指導形態


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