福島県教育センター所報ふくしま No.12(S48/1973.8) -005/025page
小・中学校教材 日 影 曲 線 モ デ ル と 流 水 モ デ ル
――地学領域におけるモデルの製作と活用を中心に――第2研修部 小野寺 寿雄
探究の過程において,観察や測定によって得られたデータを解釈するときに,いろいろなモデルを作り,それをもとにしてひとつひとつの事象を説明したり,未知の現象を予測したりすることは,科学の方法の中でも重要視されているようである。特に,地学の領域においてはいろいろな要素が複雑に組み合わさっている自然現象そのものが直接学習の対象であり,さらに,日常経験をはるかに越える時間,空間をあつかうので,適当なモデルをくふうして活用することによって学習の効果をあげ得ることが多い。ここでは,身近な材料で簡単に製作できる「日影曲線モデル」と,複雑な現象を単純化して考察できる「流水モデル」について述べてみたい。
日影曲線モデル 1. 日影由線モデルについて
天体の学習では,その空間的症拡がりが常識をはるかに越えるだけでなく,観測して得られるデータは,すべて地球上からの見かけの現象のものであるため,正しい概念をはあくさせることはなかなか困難である。この日影曲線モデルは,観測された結果に基づいて地球の自転や地軸の傾き等を推論させるだけでなく,直接測定が不可能な赤道上および南半球や極点での日影曲線を予測させたりして,太陽と地球相互の関係の考察を深めることができる。これについては,いくつかの試みもあるが,ここにあげたものは,材料が安価である,比較的単純な
形で短時間に製作できる,したがって数多くそろえることができる等のメリットをもつものである。
2. モデルの製作
(1) 製作材料 透明半球 1組(ビトー式,同じ大きさのもの) 鋼鉄線 1本(径0.4cm,長さ30cm) ゴムせん 2個(1号) 塩化ビニル板3枚 (10×10cm,厚さ0.6m) 円形磁石3組 (径1cm) 鉄釘3本 (長さ1.5cm) 接着剤, 塗料少量
(2) 製作法( 図1参照 )
[地球モデル] 透明半球の頂点に穴をあけ,2つを合わせて接着し,透明球を作る。球に針金を通して上下をゴムせんで止め地軸とする。南北両半球の中緯度付近および赤道上の3点に円形磁石をはりつけ,適当な塗料をぬって仕上げる。
[地平面モデル] 塩化ビニル板を直径10cmの円形に切り,中央に接着剤で円形磁石をはりつける(この場合,地球モデルの磁極との関係を注意する)。その中央に鉄釘を立てると,磁石のはたらきで板に垂直になるので,それを日影棒のモデルとする。
4. 活用法
(1) 日影曲線のとり方
部屋を暗室にして,太陽モデルとしての光源(自作品100W電球使用)から1〜2m離してこのモデルを鉄製スタンドでセットし,ゆっくり回転させながら地平面モデル上に投影された釘(日影棒モデル)の影の先端を水性サインペンでプロットする [図2]。
(2) 探究の過程への位置づけ
このモデルの探究の過程への位置づけはいろいろ考えられるが,1例をつぎにあげてみよう。
○冬至,春・秋分,夏至付近の日影曲線を実測し観察する。
○このモデルの北半球中緯度の地点に地平面モデルをつけて,地平面と東西南北の方向を確認する。
○日影棒の影の先端が線を画くことから,地球の自転を推論する。
○日影曲線の方向(西―> 東)から,地球の自転の方向を推論する。