福島県教育センター所報ふくしま No.12(S48/1973.8) -007/025page
るが粒の大小と動き初めるときの流速の関係はあきらかにすることができる。
(3) 沈降速度と粒度別垂直分布
試料の粒度と沈降速度および分級による垂直分布を考察するものである。沈降実験管に水を入れ,一定の深さまで試料が沈むのに要する時間を測定する。試料の粒度を変えて測定し,結果をグラフ化して考察する。また,別の管に水を入れ,いろいろな粒度のまじった試料を50cm 3 ぐらいずつ2〜3分間隔で投入すると,分級作用による層の形成を観察することができる( 図4 )。
(4) 粒度別水平分布
流れが弱くなった場所で試料の粒度の大小によってどのように水平分布するかを調べるものである。水平たい積槽の流路から各種の粒度のカラーサンドを流し,たい積槽内の水平分布状態を調べる( 図5 )。たい積物の上に,方眼付き塩化ビニル板をあて,流出口からの距離と試料の粒度別パーセントを求め考察する。
(5) 浸食量とたい積量
たい積実験装置を使って,浸食量とたい積量の関係を考察するものである。たい積実験装置にカラーサンドで陸上部と海底部をつくり,その形を側面にあてた透明塩化ビニル板に水性サインペンで記入する。一定時間水を流し,変化した形を再び塩化ビニル板に記入し( 図6 )塩化ビニル板をグラフ用紙の上に麿いて浸食された面積とたい積した面積を求め比較し考察する。さらに,流量を一定にし,時間の変化と浸食(たい積)量の変化を測定して考察したり,遷移点(河道の不連続点,川の早瀬に相当するところ),平衡点(この点より上部が浸食,下部がたい積となる)の観察やたい積地形の中の偽層の観察なども可能である。さらに,水位を調節することによって,隆起,沈降に伴う地形の変化も考察可能である。
(6) 流水の総合モデル
流水台(大)の中に川のモデルを作り,流水のはたらきを総合して考察するものである。流水台を傾けて上流部に砂を入れ,直進水路や蛇行水路を作り,水を流して浸食・運鍛,流路の変化,たい積のようすなどを観察する( 図7 )。浸食では下刻や側刻による川の形の変化・運搬では運搬される粒の大きさや運ばれ方(転流,掃流等),また,蛇行水路では両岸の流速の違いとそれに伴う浸食やたい積と川原やがけのでき方などを考察することかできる。さらに,流量を変えたり,傾斜角を変えたりして時間的な変化を調べていくことも可能である。ここでは(1)〜(5)までの実験結果と結びつけて,流水のはたらきを総合的に考察する。
4.活用にあたって
ここにあげたいくつかのモデル実験は,流水のはたらきを分析的にとらえ,それらを総合して考察していく上で,それぞれのモデル実験がどんな役割を果たすものであるかをあきらかにしておくとともに,探究の過程への位置づけをくふうすることも必要である。また,このモデル実験の中のいくつかは,こどもの考えによって計画し進められることも期待できよう。ともかく,これらのモデル実験を通して水の流れとそれによって生じる地移のはたらきあいについての関係的な見方・考え方を育てることを期待したい。
地学領域のモデルを2例あげてみたが,いずれもモデルであるからには,現象と対応する点と相違する点(限界)があるわけである。この点をはっきりさせるとともに,後者については特に,時間・空間のスケールの箸しい違いに留意して指導に当たる必要があろう。