福島県教育センター所報ふくしま No.12(S48/1973.8) -008/025page
中・高共通教材 揚げ物学習における油脂の酸敗に関する実験
――数量的な処理のしかたを中心として――第2研修部 佐藤 清子
1.はじめに
調理は食品の性質をよく理解して,それにさからわないようにしないとよい結果はえられないものである。
したがって中学校・高校ともに「食品の調理上の性質について指導する」という項目が大きくとりあげられている。このねらいは,調理手法とともに調理中に起こる食品の物理的,化学的な変化に目をむけさせ,科学的調理ができるようにするとともに,転移,応用の能カを養うところにある。
調理指導過程としては
食品の調理性の理論 ―>
実 験 ―>
実 習
食品の調理性を理解させるために実験,実習を通して指導する。実験は実習と緊密に関連させて取り扱う必要があり,科学的な根拠を理解させ,適切な調理が能率的にできるようにくふうさせたい。
今回は,揚げ物の学習内容の中から,油脂の酸敗についてとりあげ,2〜3の実験を試みた。揚げ物に使用した油は,ゆで汁や煮汁のようにその役割を終えれば処分してしまうというわけにいかず,2度,3度と繰返し使われる。油の使用回数が増すにつれてその質は変化し,揚げ製品の味や成績が悪くなってくる。また保存の条件が悪い時には変質を早め,健康にも害を及ぼし,使用できなくなる。揚げ物に使う油脂の劣化の判定ができ,油の合理的な使用ができるように指導したい。
中学校では実験としてとりあげる時間がないが,教師示範として,または実験結果を資料として活用していただきたい。
2.揚げ油使用後の取り扱いと酸敗の関係
1.保存場所による過酸化物価の変化
油脂の酸敗の前段階として生成される過酸化物は,ヨウ化カリを酸化してヨウ素を遊離させる。このヨウ素をチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定して,試料1kgに対するミリグラム当量であらわす。したがってチオ硫酸ナトリウムの消費量が大きいほど,酸化状態が進んだものである。
(1) 実験方法
1)試料
実験油 実験油の条件 保存場所 新鮮油 大豆油昭和47年10月11日製造 昭和47年12月6日開栓
じゃがいもを
揚げた油上記の油300cc,温度180度じゃがいも―3.5cm×4×0.3のもの15gずつ12回揚げた油 1.室内 2.冷蔵庫(0度)
あじを
揚げた油上記の油300cc,温度180度 あじ―15gのそぎ切りを15gずつ12回揚げた油
1.室内 2.冷蔵庫(0度)
実習年月日 昭和47年12月6日 実習後こして保存
2) 過酸化物価の測定方法
1 500 cc三角フラスコに10gの試料を秤取する。
2 氷酷酸とクロロホルムの混合液(3:2)50 ccとK I飽和溶液1ccを各フラスコに加え,15〜20秒間すみやかに振り,正確に1分間静置する。
3 次に蒸留水100 ccを加え激しく振る。これに数滴のでん粉溶液を加え青色となったものをN/10 Na 2 S 2 O 2 液で無色になるまで滴定する。
計算式
M = TN/W×1OOO
Mは過酸化物価 NはNa 2 S 2 O 2 の規定数 TはNa 2 S 2 O 2 のcc数 Wは試料油脂のg数