福島県教育センター所報ふくしま No.12(S48/1973.8) -009/025page
(2) 実験結果と考察
調理前の新鮮油の過酸化物価は2である。じやがいもを揚げた油の冷蔵庫保存のものは,1か月で2.6, 2か月でも3.2と酸化の進み方がゆるやかである。あじを揚げた油の冷蔵庫保存のものは,2週間まではゆるやかであるが,1か月で7.3,2か月で16.7と高い値を示している。これは,あじのたんぱく質や脂肪などの溶出物が影響を与えているものと思われる。油は低温で保存するのが望ましい。2.TBA法による酸敗度の測定
チオバルビツール酸は脂肪酸の酸化生成物であるマロンアルデヒドの反応で赤色色素をつくる。この発色の強さを比色定量して酸敗の程度を知る方法である。
TBA値0.2を油の使用限界とみると,今回の滴の状態では,冷蔵庫保存で約2か月半ということになる。家庭では,使用後の油は冷蔵し,妙め物などに用いて長い日数保存しないようにしたい。学校で揚げ物学習をした場合,学級数によっては,かなりの量が残るから,その後の使用,保存法をよくし,適切な試料が与えられるようにしたいものである。
(1)実験方法
1) 試料
1.の過酸化物価の測定に使用したものと同じもの
2) 用具
ホモジナイザー,遠心分離機,比色計
3) TBA法
1.油脂2ccに水20ccを加え,ホモジナイザーで2分間かくはんする。この混合物のうち,5ccを50ccの遠沈管に入れ,これに20パーセント トリクロル酷酸/2Mリン酸溶液の5ccおよび0.01M2―チオバルビツール酸10ccを加え,沸とう中で1時間加熱する。その後,直ちに取り出し氷バスに10分間つける。(氷バスにつける時は,遠沈管のふたをとる)
2.この時TBA反応がピンクに呈色するので,2:1イソアミルアルコールピリジン(イソアミルアルコール2, ピリジン1の混合物)15cc加え,2分間振り,2400回/分で15分間遠沈して,この色染を抽出する。
3.この発色した溶液5ccを比色計用の試験管に移し,530 で比色する。
4.試料を加えないものについて,同一条件で操作を行ない,これを比色定量の際の基準とする。
(2)実験結果と考察
冷蔵庫保存の方がTBA値が低く,酸敗の進み具合がゆるやかである。
お茶の水女子大学の吉松藤子先生は,揚げ油を用いてフレンチソースを作り,刻みキャベツを和えて官能試験を行なったところ,ポテトを揚げた油では,加熱時間1時間で不味になることを危険率5パーセントで有意差を認め,その時のTBA値は0.22となったと報告している。(昭和47年度学会賞受賞記念論文「揚げ物に関する研究」)
3.揚げ油の疲れと泡延距離の関係
油が新鮮な間は種物を入れた時には大きい泡が種物の周囲のみにでき,種物を取り出すと泡は直ちに消える。長時間の加熱で油が劣化してくると,種物を入れたときに細かい泡がもくもくと油の表面の広い簡囲に広がる。したがってこの泡延距離を計って油の劣化の判定をし,使用限界を判断することができる。
(1)実験方法
1) 試料
実験に使用した油 実 験 油 実験油の条件 新 鮮 油 大豆油 昭和48年1月11日製造 昭和48年6月5日実験開栓
じゃがいもを揚げた油 1.の過酸化物価測定と同じもの 室内6か月保存のもの(S.47.12.6〜)
あじを揚げた油 1.の過酸化物価測定と同じもの 室内6か月保存のもの(S.47.12.6〜)
2) 用具
フライパン(直径24cm,高さ5cm,ステンレス製).電気コンロ(300W〜600W切りかえ)