福島県教育センター所報ふくしま No.12(S48/1973.8) -010/025page

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温度計,スタンド,ノギス,ストップウォッチ

 3) 泡延距離の測定方法
 1.フライパンに揚げ油400cc入れ,180 Cに加熱し,2cm 2 厚さ3mmのじゃがいもを投入し,じゃがいもの周囲より連続的に発生する泡の距離をノギスで測定する。
 2.泡延距離の測定

図3 
図3 イラスト

写真2 ノギス
写真2 ノギス

 じゃがいもの中心を基点とし,両端より連続的に発生する泡延距離の直径を測る。泡延距離の申にはじゃがいもの20mの長さも入っている。じゃがいもを投入し,その発泡状態を観察すると,投入後30秒までは,じゃがいもの中の水分の影響により発泡にむらがあり,測定しがたく,1分後には泡がほぼ一定になる。その時の泡延距離を測定する。(泡延距離を測定する際,じゃがいもが移動してはかりにくいので,細い針金で中央をさして固定して測定した)。

(2)実験結果と考察

図4 揚げ油の疲れと泡延距離の関係
図4 揚げ油の疲れと泡延距離の関係

写真3 新鮮油の場合
写真3 新鮮油の場合

写真4 変敗油の場合
写真4 変敗油の場合

 図4は新しい大豆油を40時間加熱して泡延距離を測定したものであるが,0時間のものは(油鍋を火にかけ180 Cになったらすぐ測定したもの) 写真3のように,じゃがいものまわりにわずかにきれいな泡か立つだけで,測定値も25.7mである。15時間までは泡延距離もゆるやかな上昇を示しているが20時間で40.3 mmと急に上昇する。15時間までは色も淡黄色で,新鮮油とあまり変らないが,20時間では淡褐色となる。粘度も増し,臭いも悪くなってきた。この後は細かい泡の広がりが急激に増し,泡延距離が写真4のように大になってくる。泡延距離,色,臭い,粘りなどから総合的にみて,泡延距離32mが使用限界めやすとみてよいと思う。
(なお,加熱は1日につき,5時間を限度とした。)

図5 新鮮油と酸敗油の泡延距離の比較
図5 新鮮油と酸敗油の泡延距離の比較

 図5は,新鮮油と酸敗油の泡延距離を比較したものである。新鮮滴は図4の0時間と同じである。変敗油として,あじおよびじゃがいもをそれぞれ揚げた油を室温で6か月放置しておいたものを使用した。泡延距離はあじの方が37.3mm,じゃがいもの方が35.8mmと高い値を示している。図3のものにあてはめれば,約20時間加熱した油と同じくらいの酸敗をしていることになる。逆にいえば,加熱が油脂の酸敗に非常に大きな影響を与えているわけである。酸敗油の毒性については,多くの研究が底されている。調理上これらの油脂の変化をできるだけさける注意としては,まず加熱時間を少なくすることである。調理実習の際,作業手順を立てさせるが,揚げ物学習においても,油鍋を火にかける時間を考えさぜる。加熱したり,さましたりをくり返えすと油が早く酸化するから,材料の準備ができないうちに油を加熱しないようにさせたい。
 泡延距離測定による劣化判定の方法は,特別の試験機器も必要なく,時間的にもすぐ判定できる方法で簡単である。特に実験として時間をとらなくとも,揚げ物実習前に示範してみせる程度でも理解させられるものである。生徒も家庭での油の劣化判定に簡単にとり入れられるものと思う。


4.おわりに

 油脂の調理性のうち,油脂の酸敗を中心に調理および保存中における油の劣化判定の方法とその実験結果を紹介したが,これは一部にすぎず,日常食生活においては,数多くの場合が考えられる。例えば

 1.作業手順との関係 ・野菜から魚の順に揚げた場合
               ・魚から野菜の順に揚げた場合
 2.油の保存条件の相異による比較
  こしたもの,こさないもの,容器の違い,温度など
 3.使用した油に,新しい油を加える量による比較
 4.揚げ鍋の種類と曝気面積の相異による比較
 5.同一鍋でも使用する油の量の相異による比較

などがあげられる。
生徒達が,学習をもとに,家庭クラブ,H・P,H・Wなどで身近な問題をとりあげ,発展させるとよいと思う。その際,実験方法は設備などで過酸化物価,TBA法ができにくい時は,クライステストと泡延距離というように組み合わせて用いるのもよい。
 更に,これらの学習から,油脂性食品の正しい購入や保存方法など,食品に対する正しい知識と理解が生まれ,適切な使用がなされるものと思う。


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