福島県教育センター所報ふくしま No.12(S48/1973.8) -020/025page
教育関係諸機関の情報紹介 第39回全国理科教育センター物理部会に参加して
第2研修部 寺島 八郎
この物理部会は,全国理科教育センターの理科担当者が年に1回だけ平素の研究資料を発表し合う研修会である。今回は栃木県教育研修センターが当番で7月5日から7月6日まで開催されたものでこのときのようすを概略的に紹介することにしょう。その部会の内容は,
1.特別講演会 ( 7月5日(木) 9:00〜12:00 )
(1) 新しい理科教育について。(第2次理科現代化講座内容と基礎理科) 講師文部省教科調査官 伊藤信隆先生
(2) IEA国際理科教育調査について。(IEAとは何か)
講師国立教育研究所科学センター長 大橋秀雄先生
2.研究発表会 ( 7月5日(木) 13:00〜17:00 )
(1) 口頭発表 ( 1人発表時間20分で実施)その研究題は
1 小学校6年電磁石教材の指導。(残留磁化の研究)
2 電流の磁気作用の指導。(直線状の導線の磁化の研究)
3 62 Cu, 106 Ag の生成と半減期の測定。(べ一タトロンの研究)
4 音波,電波の複スリット干渉。(波動現象の研究)
5 風車の回転とその問題点。(風車の回転の諸特性など)
6 カ学的エネルギー概念について,(エネルギー指導)
7 カ学台車の効果的な使用法。
8 単元構造図の一例。
(2) 誌上発表(研究集録として刊行)
1 単振り子記録タイマーについて。
2 小学校第1学年磁石教材の取扱いについて。
3 電源トランスを用いたツーロンの移相回路の研究
4 位置エネルギー実験の検討。
5 熱帯(タイ国)における日本製理科機材の特質。
6 水の気化熱の測定。
7 場の概念の指導用教具開発と利用法。
8 エネルギー概念育成に関する学習システムの設計
9 X線回折説明用実験装置の試作。
10 マイクロ波の物理実験教材への活用について。
11 万有引カの法則の取扱いについて。
12 FZPを利用するホログラフィについて。
13 超音波によるドツプラー効果の実験。
14 電磁誘導の法則について。
15 仕事とエネルギー
16 光教材指導における太陽電池の利用。
17 簡易磁力計の試作とその利用。
18 電磁誘導の定量的実験について。
19 自作電気炉の特性について。
20 初等電流教材の論理構成。
以上であるが,この研究集録は現場教師の研究の手がかりとなる資料であり,活用されれば幸甚である。
3.研究協議 ( 7月6日(金) 9:00〜11:30 )
(1) エネルギー概念を育成する指導」について。(共通テーマ)
(2) 「科学の方法」の評価について。(特別テーマ)
(3) 理科教育現代化にどのように対処していくか。
4. 野外観察 ( 7月6日(金) 11:30〜16:00 )
日光地区の植物相と地形・地質にっいて臨地指導を受けた。特に,戦場ケ原の初期森林のでき方の研究資料は実にすばらしい資料であることを紹介する。
さて,私は2日間の集会で印象に残ったのは伊藤信隆先生から中央理科教育現代化講座の一部が紹介されたことである。その中に,国立教育研究所科学教育センター森川久雄先生の「新しい理科の学習指導と評価」についてと題し,探究学習をさせる欧米諾国の理科教育カリキュラムの導入を位置づけた森川図表を考案されたことである。「基本概念を育てるもの」と「科学の方法を身につけさせるもの」とは車の両輸のごとく縦軸にとり,「教えるもの」と「育てるもの」を横軸に位置づけ,PSSC, CBA, CHEMS(高等学校), IPS, PS2(中学校) ESS, AAA SSCIS(小学校) などを明確化した。このような位置づけをしっかりおさえて,その内容を吟味し,実情を探知しながらプロジエクトの一つ一つの長所をとりあげ,短所を捨てながら探究過程の学習を展開することが重要である。また,伊藤先生は森川図表を,さらに,次のように考案している。
科学の内容と科学の方法を縦軸にとり,「教育」を「教」と「育」とに分けてこれを横軸に位置づけた。また,現在は議論と討論の時代ではなく実践段階の時代であるとカ説された。生活単元学習,問題解決学習,系統学習,発見学習,探究学習たどの学習原理を究明するとともに,それぞれの学習の長所や短所を検討し,一つのプロジエクトのみにかたよらないで総合化した学習をさせることが大切であると結論している。字数に制限があり意をつくせないことを遺憾とするが研究資料は保存してあるので研修においでの際はぜひ利用されることを期待して止まない。