福島県教育センター所報ふくしま No.12(S48/1973.8) -022/025page

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教育図書の紹介

第1研修部   藤田 利雄

◇工作による創造教育(新しい造形への道)
 岡田清著 創元社 B5版225頁 定価680円

 「山の姿は,春は新緑に,やがて緑深く,秋は紅葉と変化しつつ,しかもそうした変化の奥に,厳然とした動かない本質がたしかにある。山とはじつはそのものを言うのだ。工作にもそれがあるはずだ。そして,どんな時代になっても腰のぐらつかない工作教育論をと,私は燃えた」。これは著者の序文の一部である。工作という意味内容は非常に広く,このためにまた学校教育の場での工作は,あるときは工業科的に,またあるときは理工科的に,そして作業科的にと時勢の波によって,その取扱い方がしばしば変えられてきた。著者は冒頭にかかげたようにこの点を憂い,新しい工作教育の開発と,その理念樹立に一つの方向づけをこの本で示している。
 以下内容の一部をかいつまんで紹介したい。

○工作とは何か。
 工作とは何もむずかしいものではない。描画によって魂の自由をとりもどした子供たちは,やがて絵ばかり描いていることの頼りなさと,不自由さを感じ,材料を自由にしてやると,子供ははり絵をやるし,次は土いじりをやりだす。子供たちの周辺にいろいろの材料をおいてみると,必ず何かをつくりはじめる。木片をさわってみて,たたいてみて,ぶっつけてみて,そして彼らはやがてそれで自動車をつくりはじめる。釘がほしい,鋸がほしいと言いだす。これでよいのである。造形美術工作は誰にでもできる。それは絵の発展であって,絵と材料がちがうだけである。そして絵は平面の表現であるが,工作は立体となっただけである。このように論じ従来の工作教育でままみられた技術中心・実用性中心の工作教育の弊害を極カ排除しようと提唱している。

○新しい工作を見る眼,造る眼
  工作品を美的形体としてか,機能形体としてか,また造形基礎形体としてか,種々の見方があるので,こんどの授業はどの立場で作らせるか,事前に目標を明確にしてかかるべきであると強調している、

○創造性,芸術性,機能性にたつ工作の内容と性格 絵画との関連に立って工作の内容を次のようにあげている。
 1.写生作
 2.模作
 3.思想作
 4.機能作
として,4の機能作は機能教育として行なうわけで,これこそ工作の独自的なものであり,造形要素についての感覚訓練と共に見のがしてならない重要な性格であることを力説している。また,子供にはうんと手を使わせたい。手で物をつくることが,人間だけのなし得ることである。小学校では手だけでできるだけ工作するのがよく,中学へ進んだときに,その手は機械の操作につづく,こんな手をつくるべきである,と。

○工作で解決すべきこと。
材料の面で
材料のもつ外部低抗には,はっきりと限界があるが,内部低抗は子供の発達段階にそったものでなければならない。抵抗が大きすぎると子供は工作が嫌いになる。
工具の面で
工具を使うということが工作の特徴ではあるが,これを整備するための費用の点が,工作不振の一つの原因にもなっている。工具の(特別な)いらない工作を研究すべきである。
技術の面で
技術はくりかえして経験することにより身につくもので,その修得にあたっては,発見させるよりも教え込むのがよい。したがって時間数に制限のある学校教育の場にあっては,技術の種類と限界とは十分に研究されなければならない。工具を使う上手な使い方と,それにともなう心づかいを教える程度でしっかりと教育すべきであるとのべている。以下項目のみあげる。

○機能とは何か
○工作教育の重要性
○今日の工作教育等
小中学校の工作,工芸の振興のためこの本を是非お読み下さるようおすすめします。

◇工作工芸の基礎4金属 高山正喜久, 坪内千秋編 開隆堂出版株式会社
B5版変形 定価1500円
 中学校美術の指導要領改訂により,大きく浮かびあがってきた工芸領域の中の,金属材料を教材として取扱う場合,是非一読をおすすめしたい。金属工芸の実技に関し非常に親切に解説してあります。


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