福島県教育センター所報ふくしま No.13(S48/1973.11) -010/026page

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4 中和反応

新しい定義からして中和反応は次式のようになる。

H 3 O + +OH -  → H 2 0+H 2 0

H 3 O + が酸で,塩基のOH - にH を与えたのである。そこで,NaOHが塩基であると考えるより,OH - にH が塩基であると考える方が適切である。

中和反応の学習に従来必ず行なわれてきた中和滴定実験もそれなりに意味を持っているが,それに止まることなく,むしろ滴定曲線までもっていくことにより,より広範囲に酸・塩基反応を考えさせることができる。

 実験7
 
次の各0.1M溶液の滴定曲線をPH計を用いて書いてみる。
  HCl-NaOH HCl−NH 3 NaOH−CH 3 COOH
中和点における各溶液のPHはほぼいくらか,またその理由について述べよ。
それぞれの浪合の指示薬はどんなものがよいか。
参考までに滴定中の体積とPH値を示す。
 
 V 1
…0.1M−HCl20mlに対する0.1M−NaOH の体積
 V 2
…0.1M−Ch 3 COOH20mlに対する0.1M−NaOH の体積
 V 3
…0.1M−HCl20mlに対する0.1M−NH 3  の体積
 

PH

V 1

V 2

V 3

3.0

19.60ml

 

19.60ml

3.5

19.87 

 

19.87 

4.0

19.96 

2.96ml

19.96 

4.5

19.99 

7.11 

19.99 

5.0

20.00 

12.72 

20.00 

5.5

〃 

16.94 

6.0

〃 

18.92 

20.01 

6.5

〃 

19.64 

20.04 

7.0

〃 

19.89 

20.11 

7.5

〃 

19.96 

20.36 

8.0

〃 

19.99 

21.14 

8.5

〃 

20.00 

23.59 

9.0

〃 

〃  

31.37 

9.5

20.01 

20.01 

56.00 

10.0

20.04 

20.04 

 

10.5

20.13 

20.13 

 

11.0

20.40 

20.40 

 

11.5

21.31 

21.31 

 

12.0

24.44 

24.44 

 

以上,酸・塩基の指導の概略を述べたが,要は講義だけに頼らず,実験を通して拡張された概念の利点などを理解させることである。


5 弱酸弱塩基の電離定数の測定

PHの意味,PH(濃度)と電離度の関係,濃度と平衡定数の関係などを考えるのに良い教材であり,平衡定数を理解させる数少ない実験として今後実施していきたいものと考える。

 実験8
次の濃度の酢酸水溶液をつくり,PHを測定し,それから酢酸の電離定数Kaを計算し,濃度との関係を考えてみよ。
また,Ka′=〔H 2 /Cの値を求め Kaと比較してみる。
次に,濃度Cと電離度αのグラフを書きどんな関係があるか考えてみよ。
  1×10 −1  5×10 −2  1×10 −2  5×10 −3  1×10 −3   モル/l
 次に測定値の一例を示す。

図1
理論値 Ka=1.754x10 -5  PKa=4,756
(化学便覧による)  (25ºC)

本年度の高校講座における測定でも似た結果が得られており,数値は常に許容される誤差の範囲で求まる。PH計を死蔵させておかず活用しなければならない。また,計算は生徒に演習させると共に,教師は電卓を利用してみるのも一方法である。

次のグラフから明らかなように,電離度は濃度と共に変化するので,同一濃度での比較でなければ強酸,弱酸を示さないこと。それに対し,電離定数は濃度に無関係なので,その大小で強酸弱酸を考えることができることがわかると思う。

KaとKa'の値を比較するとKa記号5 Ka’と考えてよいのは,αの相当小さい範囲であることがわかる。

次に濃度と電離度のグラフを示す。

グラフ3


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