福島県教育センター所報ふくしま No.13(S48/1973.11) -011/026page
中 学 校 教 材 創造的思考力の伸長を図り
学習内容を定着させる指導
−教材研究の視点についての一考察−
第2研修部 松 本 道 夫
1 教科の質をふまえる
中学校における「技術・家庭科」の役割は,「未来社会の担い手となる技術能力と,技術的態度を啓発することによって,その人々の集団としての未来社会で,技術のもつ本来の性格とカとが正当に発揮されるようにすること」(馬場信雄編『技術科指導事例集』,である。そのために,技術と生活との関係を正しく理解させ,文化的条件,社会的条件,精神的条件など複雑な関係を,物的な面から技術の有用性をわからせるところにある。ここから,生活の見方,考え方,対処のしかたの技術の習得をさせていく。実習をとおして製作し,その過程における計画,整備などに関する技術の基礎を学ばせるのである。
頭の中に,ある具象をうかべ,次にその表象を選択し組織し,変形させて問題解決へすすむ場合もあろう。構想なり着想なりをほりおこし,過去の経験(先行的経験技術)を想起して,観察とか調査などをして,表現への意欲を触発し,構想の表現や表現要因の相互検討をはかるなどして拡げ,くふうと創造力をふかめて,適切な表現としてまとめさせる場合もあろう。示範資料などによって,または試行的経験によって獲得すべき技能への意欲づけをなし,見通しを立てさせ,さぐらせ,計画させて,実践化をはかり,その技術をつかませることもあろう。このようにして技術の習熟をはかり,学習したカを定着させて,生活に応用(転移)できる能力をつけていくことである。
(1) 軸と軸受の簡のまさつを少なくするために潤滑油を入れる。潤滑油は軸と軸受の間こ油膜を形成するため,荷重に応じて粘度をもっている。「だがしかし」粘度があれば,粘度のないものより「まさつ」は大きいわけである。「まさつ」をより少なくするために,油より粘度のないものはないだろうか。水はどうだろう。しかし,水を軸と軸受の間に入わても,おし出されてしまう。おし出されないようにする方法はないだろうか。圧送したらどうだろう。圧送することを考えれば空気でもよいはずである。ここに,5〜8気圧の空気を圧送して軸をうかす空気軸受(エア・べリング)が出現する。こうした技術的思考のすじみちを訓練することによって,創造性はつちかわれる。((1)清原・松崎著『技術教育の学習心理』)
要するに,技術・家庭科の総括目標は「生活に必要な技術を習得させ,それを通して生活を明るく豊かにするためのくふう創造の能力および実践的な態度を養う」(学習指導要領第2章第8節)ことをふまえることが先決である。