福島県教育センター所報ふくしま No.13(S48/1973.11) -016/026page

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に遵守すべきことである。

医学的疾患のないことが分かったら,矯正を開始するわけだが,まず第一に父兄との面接を通じて以下のことを聴聞する。

  1. 夜尿の起こった時期およびその型
  2. 夜尿の頻度および失敗する時間帯
  3. 昼間における排尿の回数
  4. 家族関係および夜尿に対する現在までの対策(躾の主体者,寝具や下着の与え方,夜尿に対する叱責の有無など)
  5. いままでに治療をうけたことがあるかどうか
  6. 水分の制限の有無,入浴の度合と時刻
  7. 便所と寝室の距離,便所の構造および照明の度合

VI 矯正方法

さきにのべたように,夜尿症は学習された悪癖(躾の失敗による学習された行動)と解されるものがほとんどだから,これを形成している諸因子を消去もしくは除去することを矯正の第一主眼点とし,以下の手続きを実施する。

  1. 便所の照明が暗い場合には明るくし恐怖心を除去
  2. パンツは毎日洗たくしたものを着用させる
  3. シーツはフトンの上にビニールを敷いた上に敷かせるが,古いものでもよいから洗たくをした小便のにおいがしないものを使用させる。におい刺激→夜尿の誘発の条件反射反応を消去するため
  4. 家族全員が夜尿のことを口にせず心理弛緩を図る
  5. 水分の制限を解除するとともに,朝・洗面時にコップ2〜3杯の水を飲ませ,排尿をできるだけがまんさせながら,意識的に膀胱収縮筋と尿道口内括約筋の訓練を日中行なわせる。水分の制限解除は心理的な圧迫を緩和するカがあることも利用する
  6. 入眠期に母親による暗示を利用(テープ・コーダーを手順するのもよい)尿意と覚醒の条件づけをはかる。暗示の方法は,夜尿児が入眠するさい,うとうとしかかったころをみはからって,ささやくような調子で,「ねていておしっこがしたくなつたら,必ず目をさましてお便所に行く。おしっこをしてしまったらまたすぐにねむる」という暗示を三・四度くり返すようにする。
  7. 小学校3年生以上の児童の場合は,本人による自己暗示法によるのがより効果的である。具体的方法は,就寝前ふとんの中で,a,全身にカを入れ,足首→ひざ→手首→ひじ→首,の順にカを抜き,全身を弛緩させ,b,深呼吸を四・五度くりかえさす。C,そのあとに「ねていておしっこがしたくなったら必ず目をさます。お母さん(おこす人の名前)におこされても必ずバッチリと一度で目をさまして便所にいく」という暗示を頭の中で数回くりかえさせる。さらに,実際に自分が目をさまして便所に行く場面を想像させるようにすると効果が倍化する。これを二・三週続ければ,大半の児童は尿意と覚醒の条件づけが確立され,尿意とともに目をさますようになる。
  8. 就寝前にオブラートに包んだ食塩小サジー杯を服用させ,夜間の排尿をおさえるようにするのもよい。
  9. アラーム・シーツ(竹井機器工業より発売されている)を使用し,排尿と覚醒の条件反射を作って治療していく方法も極めて効果的である。
  10. 催眠暗示法により,尿意と覚醒の結合を条件づける方法もある。しかし,催眠法の技術修得が必要となるので専門家(日本催眠医学心理学会員)に依頼すべきであろう。なお,本技法を修得し,教育催眠の研究分野の研究を深められたい方は,センター教育相談部に連絡されたい。

学校教育相談の場では,1〜8までを指導して矯正にあたるのがよいが,それでも改善が図れない場合には,9のアラーム・シーツによる条件づけや,10の催眠暗示法を加味していくべきである。しかし,それでも効果が上らない場合には,専門相談機関への依頼が必要となろう。

なお,下記の記録表を利用し,矯正の効果を常にフイードバックしながら,はげましを与え自信をつけさせることが最も大切な教育相談となろう。

図4

夜尿児に対する学校教育相談的アプローチをのべてみたが,紙数の関係で明確さを欠いた点があったと思う。疑問の点は遠慮なくご連絡いただきたい。


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