福島県教育センター所報ふくしま No.14(S49/1974.1) -002/022page

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探究的に学習をすすめるための研究

小 学 校 教 材

「読むこと」の指導における探究的な学習

− 深い読みをめざして −

第1研修部    高 野 弘 道



現代は,情報の時代といわれている。その中にあってわれわれは,自分の意図や欲求にかかわりなく,多種多様な情報に取りまかれて生活している。一方,科学技術の著しい進歩は,高度な技能を必要とするようになってきた。このような情況下にあっては,知的内容を記憶中心に教えこむ学習にかたより過ぎては,児童・生徒に新しい明日を期待することは無理であり,新たなものを創造する思考や行動も生まれてはこない。

学習指導要領では,国語能力の本質として「国語で思考し,創造する能力と態度を養う」と明示し,創造に連なるような思考力や態度を養うことを国語教育の目標としている。これを「読むこと」の学習の面からみれば,単に読む経験の回数を重ねるということではなく,より本質的な思考活動や認識活動を重視した密度の濃い指導が望まれることになる。

教材としての文章は,意味内容としての価値と,技能的価値を含んでいるが,この価値の発見,獲得をめざした探究的な読みが展開されなければならない。このような読みの過程では,読み手自身の問題意識を学習課題にまで高め,この課題の解決をめざして,みずから予想を立てて追求していく,より主体的な活動が必要となってくる。

1.物苛文における読みの方法

国語科は,2つの大きなねらいをもっている。そのひとつは,価値的・内容的ねらいであり,他のひとつは,技能的ねらいである。

<内容的目標>
児童の観察カ,想像力,思考力などといった認識諸能力を伸ばしながら,自然や社会,人間についてのものの見方,考え方,感じ方を養うこと。

<技能的目標>

文字,発音,ことばのきまり,文,文章,文体などの意味を知って,それらを正しく使うことができる諸能力を育てること。

このねらいは「聞く・話す,読む,書く」のどの領域においても,両者は統一的,総合的な指導をとおして身につけさせなければならない。以下「読むこと」の中の物語文について考えてみる。

第1は,作品に描かれている自然や社会,人間についての生き方を読みとることによって<内容的目標>に迫ることである。たとえば,宮沢賢治の代表的童話といわれている「やまなし」(光村・6上)は,芳じゅんなかおりに包まれた「やまなし」の世界 ― 一転して恐怖に襲われる事態が生ずるかと思うと,色どりも鮮やかな光と音のおりなす象徴的な世界が,対比的な描き方で表現されている。指導者は,このような作品の特徴をおさえて,作者が自分の目で見,心で感じたとおりを,鋭く,細かく,散文的手法で描かれた形象を想像豊かに読み味わわせながら,作品の価値内容に迫らせる ― つまり,作品の主題に迫る過程を重視しながら,子どもたちのものの見方,考え方,感じ方を育てていきたい。

第2は,価値内容を支えている諸要素を段階的,系統的に追求することによって,<技能的目標>を達成することである。これによって学習指導要領の「読むことの目標と内容」でねらっている技能は,作品の世界で生き生きした力となる。文学的な文章では,文章を読みとる技能を身につけさせながら,主題を追求していくことがたいせつになってくる。

主題は,技能の習熱度によって浅くも深くもなり,技能は,高い価値を内包した主題によって,生きたカともなる.このことからも,読む技能を段階的,系統的には握して,その学年にふさわしい読み方を身につけさせ,主題を追求していく過程が探究的な読みの学習を成立させるポイントと考えられる。

とかくすると教師の意図した目標へ引っぱっていこうとするため,一定の思考のステップに無理にのせたり,あの手この手の助言やわくづけを与えたりするような指導,すなわち,あまりにも導かれることの多い学習が目につく。作品に対して主体的に働きかけ,積極的な思考活動が発揮されることによって,作者の体験に少しでも


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