福島県教育センター所報ふくしま No.14(S49/1974.1) -007/022page

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とき,横は何cmでしょうか。グラフを見て答えましょう。

また,計算で求めた値と比べてみましよう。

現在の教科書は第6学年から比例や反比例の教材をとりあげているがその内容は,

・・・などである。このような数学的モデルは,緑表紙教科書でもほとんど同じである。緑表紙教科書ではこういった一連の関数教材を第二学年あたりからとりあげているが,比例とか反比例といった名称ではっきりとうち出しているのは第五学年からである。それに対し現在の教科書では,いわゆる関数的な見方や考え方を育てるための関数教材は,第一学年からとり入れているが,比例,反比例を明確にうち出してくるのは,第六学年である。このように教材の配列関数指導の系統を比較しても,両者の間には大きな差は,みられないように思われるのである。但し,教材を学習指導要領の目標や指導内容と照合し,教師の意図のもとに,class, order, variable, corespondence のそれぞれのうち,どれに重点をおいて指導するかとなると別であり,現在の教科書には弾力性,系統性がじゆうぶん配慮されていることはいうまでもない。

小学算術,第六学年【上】〔色々ナ同席】

図5

蝋燭ヲトモスト,時間ガタツニツレテ蝋ガへツテイク。蝋ノへツタ量卜時間トハドンナ関係ニアルカ。蝋ノ残ツテヰル量卜時間トハドンナ関係ニアルカ,

  ・時間の経過と残りの長さの変化。
  ・残りの長さのとる値の範囲。
  ・時間の変域(定義域)とろうそくの長さ(値域)との対応関係の有機的なとらえ方。

などを含んだものであり現在では中学校などでとりあげられている。

小学算術,第六学年【下】〔機械】

図6
上ノ絵ハ重イ物ヲ「テコ」デ動カストコロデアル。「ロ」ニ働クカガ重サ六十 二等シク,支鮎「イ」ト「ロ」トノ距離ガ二十糎デアルトキニ,「イ」カラノ八十糎ハナレタ点「ハ」モノヲ働カセルト,物ヲ動カスコトガ出来ルカ。

3.比較調査の結果

紙表紙教科書と現在の教科書の関数教材について上したがページ数の関係で各学年ごとの比較検討の結男紹介できず・代表的なものだけをとりだしてみたが,この調査を通して次のような結論を自分なりに得たのである。

(1)
数学的モデルとしてとりあげられた関数は,現在の教科書と緑表紙教科書との間に質的な差や変化が,あまりみられないこと。
(2)
 緑表紙教科書においても,児童の発達段階に良した教材提示の配慮がなされていたこと。
(3)
関数教材も,数理思想の啓蒙に役立つものとととりあげられていること。したがって数理的な月や考え方を養うもの,観念知識を得させるもの。技術を得させるものがそれぞれバランスをとって取り上げられていたように思われること。
(4)
緑表紙教科書の教材内容から「開発する」「指導する」することをたてまえとし,注入,授与という行き方を廃し,必要または興味,関心を児童に誘発させ自発的にするように配慮されているように思われる。

以上のことから,教材内容は,現在も緑表紙教科時代も大差はなく,児童の数理思想の開発に重点が奥ていたことも,現在の指導要領に示された目標と共通るものがあると思われる。

しかし,数学的な見方,考え方を育成するため,概念を基盤とし,関数や構造の考えをとり入れることよって,算数の内容を単純化し明確化し,統合化をはろうとする試みや,ものの見方,考え方のユニークな想の開発という観点は,現在の教科書がより秀れてことはいうまでもない。

要は,教材を一つの数学的モデルとしてとらえたとき,そのモデルを一方的に提示し,思考の方向性を示し,それによってのみ解決をはからせるというのではなく,児童が自分たちの課題として意識するような課題構造をくふうし,事象を固定的なもの,確定的なものと考えず絶えず新たなものを創造し,発展させようとする態度の育成をはかるための指導法の改善が現在最も重要ではないかと思えるのである。

参考資料


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