福島県教育センター所報ふくしま No.14(S49/1974.1) -008/022page

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中 学 校 教 材

ヒヨコを使っての実験

− 消化・吸収を中心として −

第2研修部    平 山   宏


1.はじめに

「消化・吸収」については,小学校では6学年で,中学校では第2分野で学習するが,消化器のつくりについては,フナやカエルなどを解剖することによって調べられ,消化や吸収のはたらきのしくみについては,主にヒトのだ液を用いて調べる実験や,セロハンチューブによるモデル実験などが取り上げられている。あとはヒトのからだを中心とした消化器の模式図や模型をつかった学習に終わりがちで,消化器のつくりと消化のはたらきを調べる実験が直接に結びついていないきらいがあるように思われる。これには,従来使用されてきた生きた生物教材が激減して容易に入手できなくなったことや,実験を行なう時期の問題も考えられる。

そこで,解剖がしやすく,一年中いつでも安価に多量に構入できる雌雄鑑別済みの雄の雛(ヒヨコ)を使って消化管のつくりや,食物が消化管の中でどのような変化を受けて吸収されるかについて,デンプンのゆくえを中心に取り上げてみた。


2.ヒヨコの消化と吸収

実験1  ヒヨコの餌とふんの観察

1)ねらい
・ヒヨコの餌とふんの違いを観察させる。
・ヨウ素反応により餌とふんのデンプンの有無を調べる。

2)方 法
・餌とふんをそれぞれシャーレにとり,違いを観察し,少量の純水を加えてよくかき混ぜ,ヨウ素液を数滴たらして色の変化を見る。

3) 結果と考察
表1 餌とふんのようすとヨウ素反応

ようす

ヨウ素反応

黄白色をした大小の粒と粉状のものが混じっていて,魚紛のにおいがする。 +(変色)

ふん

表面は黄土色で中は茶褐色,水分が少なく固形化して,くさいにおいがする。 -(変色せず)
  〔備考〕・餌一配合飼料(初生雛用)を使用。

・ヨウ素液 − ヨウ化カリ5g,ヨウ素12.7gを1000mlの純水で溶解し,これを10倍に希釈して使用。

餌に見られた穀物の粒は体内のどこで細かにされたのか,また餌にあったデンプンは体内のどこでなくなったのかを,ヒヨコを解剖して,いろいろな消化管の内容物を取り出して調べてみる。

実験2 ヒヨコの解剖

1)ねらい

・腹部を切開して内臓のようすを観察させる。
・消化管全体を取り出してリンガー液に入れ,全体のようすや各部の形,大きさなどを観察させる。
・各部の内容物を取り出し,形状・色・含水量・においなどを観察させる。
・ヨウ素反応により内容物のデンプンの有無を調べる。

2)方 法

(1)
麻酔したヒヨコを腹面を上にして解剖皿にのせ,羽毛を水でぬらして幅1cm位肛門からのどまで刈り取る。腹面の皮膚を正中線に沿って肛門からのどまで縦に切開し,さらに皮膚の下も同様にして切開し,胸骨を切断して内臓を露出させる。
(2)
のどのところで食道を切断し,口腔から肛門に至るまでの消化管全体を丁寧にピンセットで切断しないようにはがしていく。これをリンガー液の入ったシャーレに入れて,消化管のつながりや各部の形,大きさなどを観察する。
(3)
消化管を切開して各部に含まれている内容物をシャーレに取り内容物のようすを調べる。
(4)
純水を各シャーレに少量加えよくかき混ぜて,その液を時計皿に数滴とり,ヨウ素液を1滴たらして色の変化をみる。

3)結果と考察

(1)
内臓の観察 写真1のように,くびのところに多数の軟骨輪からなる長い気管が縦走しており,胸部に入って左右の気管支に分枝している。気管の背側に食道があり,そのほぼ中央に鳥類に特有なそのうがある。切断した胸骨のところに薄い膜(心のう)に包まれた心臓がある。心臓の腹側に2葉からなる大きな肝臓がある。肝臓の右後方に暗赤色をした大きな砂のうがあ


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