福島県教育センター所報ふくしま No.14(S49/1974.1) -009/022page
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- 消化管全体の観察写真2のように,食道のほぼ中央に黄色のそのうがあり,続いて薄桃色の少しふくらんだ前胃があり,暗赤色をしたかたい筋肉の袋からなる大きな砂のうがある。次に折れ曲った十二指腸が見られ,その間に桃色をしたすい臓がある。なお肝臓の背側にある緑色をした胆のうが十二指腸に連絡しているのが認められる。十二指腸に続いて曲がりくねった長い小腸があり,腸間膜が付着している。小腸の後端に長いY字形をした盲腸がみられ,続いて短い直腸がある。
- ※給餌直後ではそのうが肥大しており,孵化直後のヒヨコでは小腸のほぼ中央に大きな卵黄のうが観察されるが,次第に小さくなりやがて消失してしまう。
表2 消化管の内容物のようすとヨウ素反応
消化管
内容物のようす
ヨウ素反応
そのう 色・形状とも餌と同じで,ぬらぬらした粘液が混じっていて量 は多い。餌と同じにおいがする。 +→- 10分後
砂のう
色・形状とも餌の状態をとどめているが,粒がやや小粒で同じ 大きさになり,ぬらぬらした粘液でなく量は最も多い。餌のに おいが残っている。 +
小腸 前端(十二指腸) 黄褐色でトロトロした液状をしており,水分が最も多く含まれ, においはない。量は少ない。 -
中央部 黄土色に変わり,だんだん水分が少なくなってねちねちしている においはない。量は多い。 -
後端 色は中央部と同じであるが,やや濃くなり,水分もさらに少な くなって固形化してきた。ふんと同じにおいがして量は多い。 -
盲腸 茶褐色をしたトロトロした液状で,量は少ない。鳥類のふん特 有の大変くさいにおいがする。 -
直腸 小腸後端より水分はさらに少なくなって固形化している。 同じ褐色がかっていて,ふんと同じくさいにおいがする。 -
〔備考〕・給餌後4時間たったヒヨコを調べた。
・前胃には内容物がなかったので省略した。内容物のようすを比較すると,砂のうと小腸とで大きく変化していることがわかる。色では砂のうまで餌と同じであるが,小腸前端から褐色になっているのは,褐色の液を出す器官があると考えられる。また,形状では小腸から粒状がなくなってしまうので,砂のうで細かくされることがわかる。砂のうを切開すると写真4のように深いひだがある部分とひだがない部分とあり,内壁はかたくヤスリ板のようになっている。
つぎに,ヨウ素反応を見ると,餌では濃青紫色であったものが,そのうでは薄青紫色で時間が経つにつれて色が消失していく。砂のうは再び濃青紫色になったまま変色しない。このことは,そのうに見られたぬらぬらした粘液が色の消失(デンプンの分解)に関係するのではないだろうか。砂のうでは粒状の餌が細かく砕かれたので再びデンプンが多くなり濃青紫色を呈したものと思われる。それに変色しないままであるのは,そのうでデンプンの分解を促進させたものが砂のうに入って何らかの影響を受けてはたらきを失ったものと考えられる。
それで,そのうに見られるぬらぬらした粘液(以下だ液と呼ぶ)を取り出して,だ液中の酵素のはたらきを調べてみる。
実験3 消化酵素のはたらきと温度との関係
1)ねらい
・体温に近い40°Cから高温になった場合と低温になった場合に酵素のはたらきがどのように変化するのか比較する。2)方 法
・だ液の採取 脱脂綿の端をよじって糸でしぼり小さな綿球をつくり,純水を含ませたものを,ヒヨコの口ばしをあけてピンセットで中へ押し込む。2〜3分経ってから糸を引張るとぬらぬらした粘液のついた綿球が出てくる。これをしぼって2〜3倍に希釈して使用