福島県教育センター所報ふくしま No.14(S49/1974.1) -010/022page
る。
※餌が付着した場合はガーゼで炉過し,綿球が深く入り過ぎた場合はPHが酸性を呈するので中性にして使用する。
- (1)
- 500mlのビーカーに水を入れ,水温を20℃に保つよう調節して,試験管に1%溶性デンプン液2mlと純水2mlを取る。別の試験管にだ液1mlを取る。2本の試験管をビーカーの中に入れてしばらく放置し,それぞれ20℃になったら,だ液をデンプン液の試験管に注ぎ,よく混ぜてそのまま20℃の水に入れておく。
1分ごとに試験管から混合液を2滴白紙を下敷にしたガラス板上に取り,ヨウ素を1滴加えてよくかき混ぜて反応を見る。色が消失するまで続け,消失までの所要時間を調べる。
- (2)
- ビーカーの水温を40℃に上げ,(1)と同様にしてデンプンの消失するまでの時間を調べる。
- (3)
- 同様にして60°Cで実験を行ない,デンプンの消失するまでの時間を調べる。
3)結果と考察
表3 だ液中の酵素のはたらきと温度の関係
〔備考〕
温 度
20℃
30℃
40℃
50℃
60℃
デンプン消失までの時間
21分
15分
11分
12分
17分
反応速度(ml/分)
0.095
0.133
0.182
0.166
0.118
o反応速度=1分間に変化したデンプン液の量(ml)図1 温度と反応速度
表3と図1のグラフから,鳥類のだ液中の酵素のはたらきは,体温に近い40℃で最も反応が進んでいる。
50℃までは酵素のはたらきはゆるやかに低下するが,50℃を越すと急な低下が見られる。高温の方より低温の方が酵素のはたらきは急激に衰えるので,ヒヨコの飼育には温度が低くならぬよう留意すべきであろう。
実験4 消化酵素のはたらきとPHとの関係
1)ねらい
・砂のうではヨウ素反応が青紫色のままなのは,だ液中の酵素が砂のうに入るとはたらきを失ってしまうのではないか,それでPHの影響について調べてみる。2)方 法
- (1)
- 4本の試験管に1%デンプン液2mlずつ取り,それぞれにPH3,5,7,9の緩衝液を2mlずつ加えたものと,だ液4ml入れた試験管を,500mlのビーカーで水温40℃に保つよう調節したところに入れてしばらく放置する。デンプン緩衝液とだ液が40℃になったらだ液を1mlずつ4本の試験管に分注しよく混ぜる。
- (2)
- 1分ごとに混合液を白紙を下敷にしたガラス板に2滴取り,ヨウ素液を1滴加えかき混ぜて反応を見る。色が消失するまで続け,消失までの所要時間を調べる。
3)結果と考察
表4 だ液中の酵素のはたらきとPHとの関係
〔備考〕 o給餌3時間後にだ液採取
温 度
PH3
PH5
PH7
PH9
デンプン消失までの時間
不明
15分
5分
8分
反応速度(ml/分)
不明
0.13
0.40
0.25
oPH3では180分経過してもデンプンは消失せずソモギ液による糟の検出もなかった。表3と図2のグラフから,だ液中の酵素はPH7付近で最もよくはたらく。
PH3では反応はほとんど見られないことから,だ液中の酵素は砂のう(PH2〜3)に入るとはたらきを失なうものと考えられる。
実験5 糖の検出
1)ねらい
・表2でヨウ素反応が負(-)になったところで,デンプンが糖に変化したのかどうか,ソモギ液で調べる。2)方 法
・実験2で取り出した各消化管の内容物をほぼ等量ずつ試験管にとり,純水を3ml加えよく振り,ソモギ液1ml加え数分煮沸して色の変化をみる。3)結果と考察
表5 各消化管の内溶物のソモギ反応
++(鮮やかに変色)+(変色)−(変色せず)〔備考〕o青色のソモギ液は還元糖で橙色に変色沈でんする。小腸では盛んにデンプンが糖に分解されており,直腸で糖が検出されないのは,小腸で糖が吸収されていると考えられる。
そのう
砂のう
小 腸
盲腸
直腸
前端
中央
後端
+
+
+
++
+
-
-
3.おわりに
ヒヨコを使ったデンプンの消化について,いくつかの実験を述べてきたが,まだ実験結果にばらつきがあるので,だ液の採取時間や希釈の検討とか,前胃やすい臓から消化液を採取して,タンパク質の消化や脂肪の消化,さらに小腸を用いた栄養素の透過などの実験等について調べてみたいと思っている。