福島県教育センター所報ふくしま No.14(S49/1974.1) -011/022page

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中 学 校 教 材

言語活動を高めるClassroom English

第1研修部    中 沢 剛太郎


1.言語の本質とClassroom Englishの有用性

文字というcommunicationのmediaを持たない末文化の時代(未開時代や幼時期)にあっては,bodylanguageのような他の手段を差しひいても,100%近く,音声が言語の主体であったはずである。文字が使われ,文明が進み,情報化社会といわれる今日になっても,われわれの言語生活の主体はやはり音声であることに変わりはない。

言語習得の過程

このことについて,右図はわれわれの一般的な言語生活におけるH,S,R,W,の割合を示している。

この表から言語生活の75%は音声を通しての communication(bearing,speaking)であり,さらに45%を占めるhearingの活動が言語生活の基盤になっていることがうかがえる。かつて,Palmerは,"言語の本質は音声である"といい,習得の過程では.(1)“ears before eyes”(2)“reception beforeproduction”(3)“oralreception before reading”と強調した。

つまり 言語習得の過程では,recognition なくしてproductionはありえず,音声を離れてreadingやwritingの活動は考えられないということである。ところで,実際には,西村稠氏によってこのことばが使われてから(1926年)すでに久しいが,その後のteaching technique や teaching methodの華やかな理論の陰にあって,ともすれば,この最も素朴な,そして最も身近な classroom English の活用が discussion の対象外に置かれてきたのは遺憾である。しかし言語の実際の運用を重視した今日の語学教育にあって,classroom Englishこそ,言語活動を有効に進める効果的手段として,再認識されなければならないと思う。

2.生徒の興味ある領域

一方立場を変えて,学習者である生徒が,三領域の中でいずれに興味を有しているのかを考えてみたい。次図によれば圧倒的にhearing,speakingに集中していることがわかる。理由の主なものは,「外国の人の話を聞いてわかる」「外国の人と自由に話したい」という願望である。この事実から,生徒の興味を持続させながら学習を進めてゆくためにもclassroom Englishは意味なしとしない。

英語学習の関心ある領域
(対象中学1年−3年,資料石川県教育研究所)

3.Classroom Englishの展開

(1)活動の効用

  1. classroom English はすべてが音声であり,しかも,hearingの要素を多く含むので,basic trainingの機会として適切である。
  2. classroom English は,各単元の到達目標そのものでない場合も多いが,この活用によって,授業の進行の中から自然にEnglish atmosphereが醸成され,smoothな運用が図られるので,授業運営にすぐれた促進剤としての役割を果たす。
  3. 間接的situatioIlは,Visualaidsが普及された今日でもおのずから限度があるが,Classroom Englislは,直接的situationを伴った活動であり,したがって,生きたことばの運用として,英語に習熟する近道である。
  4. classroom Englishが機に応じて反復されれば,前時にrecognizeされなかった生徒には,feed backのchanceとなり,recognizeされた生徒にはdrill形で,ことばが身につけられてゆくことは疑いない。

(2)活用のspace

では,classroom Englishが限定された50分の単位時間のどこで活用されたらよいか,次の表を参考にして考えてみたい。これは1年〜3年の5つの学級の,ある英語授業を再生分折して得た結果である。50分の中で教師およびtapeから発せられた音声の総数は,1年A組を例にとると英文のべ205文,英語句のべ146語,日本文のべ267文,語句のべ58語となっている。下の数字はこの中から本時のmaterialに直接つながる音声,つまりtext内にある英文や英語の語句,および日本語による語意,文意,語法の説明などを差しひいた残りの音声ののべ総数である。


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