福島県教育センター所報ふくしま No.15(S49/1974.3) -005/030page

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主体性をのばす体育学習

ー小学校高学年の走り高とぴを通してー

第1研修部 鈴 木 敬 介

1.はじめに

小学校学習指導要領において,その特別活動の目標に「児童の自発的な実践活動を通して,健全な自主性と豊かな社会性を育成し個性の伸長を図る」と,あげて,「自律的,自主的な生活態度を養う」をあげている。また高等学校の各教科以外の教育活動の目標にも「自律的,自主的な生活態度を養う」という中学校の特別活動と同じ目標をあげている。

教科の一つである体育においても,自主性のある人間を養成しようとしていることはいうまでもない。知徳体の調和がよくとれた人間形成ということをよく聞くなかで,体育指導が一方的に教えられ,ただ反復練習的な教科であるとすれば,人間形成をめざす体育指導とはいえないであろう。体育の授業といえば,あまりに運動技術や体力を高めることだけに力点がおかれすぎているように思える。たしかに,それにもそれなりの大きな価値がある。しかし,はたしてそれだけでよいのであろうか。体育の授業を通して児童たちが,その教材の技術が上達するだけでなく,それをも含めて,新しいなにものかをつかみとっていかねばならないのではないだろうか。

児童たちが学校をはなれ,社会人になってからも,生涯を通して自ら学習しながら健康づくり,身体づくりを主体的に解決していけるように準備することが体育の課題とされてきている。ここに自主性,主体性をのばす体育指導ということが問われてきていると思う。

2.自主性,主体性とは

からだは教育しなくても成長していくが,教育の場をとおらなくては,反応する神経や柔軟な身体は育たない。児童に親しまれ,生活化される教科となるためにもやりたくてたまらないといった意欲を学習活動へと高めなければならない。このように主体性を育成するには,それに適した学習方法が必要であろう。

主体的学習を進める過程でねらうものは「体育する喜びを知った人間をつくる」ことである。主体的に学習させるには,自主と協力と解決が有機的にはたらき関係しあう学習の場を構成しなければならない。したがって,

(1)自分の研究心によって自分としての考えをもつ。

(2)深く理解しその対策をもつ。

(3)自己流にならぬため,他人の意見をとり入れる。

(4)よりよきものの完成に努力する。

主体的学習に関する関連図 といった学習の流れが構成されなければ,主体性は育たない。また主体的学習は左図のごとき関連にあり,この考えは,児童の主体性をたいせつにし,その主体性をひとりひとりについて存分にのばしてみようとするものであり,「学習は自分がするものだ」といったような積極的な心構えをつくり教師の教えや助言をじゅうぶん受け入れようとする心理的態度を養い,学習に責任をもつことができるように育てることが主体的学習の第一歩である。

3.自主性,主体性をのばす授業導入のくふう

自由時に児童たちが自分たちの自由意志にもとづいて運動する場での学習態度は,全く真剣そのものだが,反対に正課の時間に,好きでもない運動を教師にいわれて行なうときの学習態度は,前者の場合とは格段のちがいが出てくる。そこで,効果的に学習させるには,児童自身,自ら進んで学習に対処することが必要であることは,いうまでもない。

このような自主的な学習態度は一体どうすれば育つのであろうか。いくつかのポイントとなると思われるものをあげてみると

(1)授業の目標を明確におさえる

自主的活動をたかめさせるには,それぞれの児童たちが,目的意識をはっきりもつことであり,具体的に学習の場で「何をするのか」をつかんでいることではないだろうか。目標が具体的であればあるほど,児童たちの行動は明確になってゆき,ことに,自主的に主体的に学習を進めていく場合,このことは大切なことである。

(2)教材に興味をもたせる

主体的な,生き生きとした学習意欲の喚起のために,学習者に何のために学ぶのかの意識化が果たせれば,学習の全体的なねらいとの中での,ひとりひとりの学習者の学習への参加が,容易になってこよう。


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