福島県教育センター所報ふくしま No.15(S49/1974.3) -006/030page

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(3)学習場面でのふん囲気を大事にする

児童たちが具体的学習の場を通して自主的,主体的学習態度を形成していくについては,その集団のふんいきが強い影響をもってくることも事実であり,教師が,あるいは児童たち相互が,相手を受けいれなかったり,拒否したり,無視したりすれば,いわばマイナスの人間関係が生じていれば,とても児童自身,自主的に積極的活動を営むことはむずかしい。その意味では,集団全体に友好的なふんいきのあることが有効であり,積極的にふんいきづくりにつとめることが大切であろう。

(4)全体と部分の関係をは握させる

単元あるいは題材を,それが全体として,どのような内容から成り立っているかを一つのつながりの中にとらえさせる工夫が大切であり,そうすれば,児童たちは目標をはっきりさせると同時に,問題解決のためにどこに着眼し,どういう角度からアプローチしたらよいかをっかむことになるのではないだろうか。

4.授業における三つの学習形態

児童たちの日常的な生活場面だけでなく,学習時においても,問題解決をしなければならないことが多い。それはグループの問題として,また個人の問題として,いずれの場面でも,児童たちの思考的態度が問題になる。

教師が積極的に問題を解決する場合と「なぜだろう」「どうしてか」「どうすればよいか」など,児童の思考が十分働くような,引きだす指導をする場合とでは,思考的態度の育成が異なる。体育の学習形態を,教師と児童の関係に重点をおいてとらえるならば,次の三つの指導に分けられるだろう。

(1)一斉指導

教師が直接児童の指導者になるという授業形態。

(2)グループ学習

学級を小さなグループに分け,児童たちの自主的学習を期待しながら,教師がこれを指導する学習形態であり,学級をいくつかの小集団に分けて学習するので,教師がそのグループや個人を直接指導する場合と,児童相互の自主性,主体的学習の場合が考えられる。したがって,児童たちが教師の意図する教育目標,学習内容,学習活動のし方を正しく理解して,すべての児童の同時学習が展開できるような指導上の方法と,グループ機能化が重要になる。

(3)自学自習

学習者である自分が,同時に指導者でもあるという形態。自分で目標を立て,内容を選択し,学習を進め,そして,自分で自己評価する授業形態であり,学習場面であれ,生活場面であれ,児童たちの自主性は,その発達段階,個人差,集団づくりの能力のレベルにおいて,その能力に適応する,きめ細かな指導によって形成されることはいうまでもないことであり,放任によって,自主性が育成されるものではない。

以上三つの授業形態について述べたが,一時間の授業が終始このどれか一つの形態で流れるということはまず少ない。一斉指導の形態からいかにしてグループ学習に発展させるか,そして,その間ひとりひとりの自学自習をどのようにいれていくか,このように三つの基本形態の発展的で流動的な変容と,これらの多彩な組み合わせによって指導を進める事が大事なことと思う。また一斉指導といっても,さまざまな変形が考えられる。いわゆる班別指導も一斉指導の変形と考えてもよいであろうし,チーム・ティーチング法も一斉指導の範囲にはいるであろう。また,グループ学習にしても自学自習にしても,その変形はいくらでも考えられる。自主的,主体性のある行動は,何よりも基礎的な技能と態度がしっかり身についていなければならない。そのためには人から素直に教えを受けるという学習態度も身につけている必要がある。

最後に,走り高とびの単元の指導を通して授業の展開について述べ,まとめとしたい。

5.授業の展開について

児童が学習を自主的・主体的に進めていくようにするためには,まず児童に,学習に興味,関心をもち,進んで課題を解決しようという意欲をもたせることが大切である。児童が学習活動にはいり,自主的学習に取り組んで,それを積極的に進めていくための原動力となるものは,導入の場における学習意欲の喚起であり,これが効果的に行なわれれば,学習活動にも高い推進力が与えられ,低ければ,推進力も低下する。このようにして喚起した,児童の学習意欲を,展開において,どう維持し,高めていくかは,その段階における指導,課題の与え方,発問,助言のしかたなどをどうするか,またどんな資料,グループノート,学習のし方,技術の要点をどう準備したらよいか,などと大きくかかわっていることはいうまでもない。

(1)教材の構成

個人種目である陸上運動領域から合理的なフォームを身につけていく走り高とび教材をとりあげた。

1. 陸上運動。走り高とび

陸上運動は,「走る」「とぶ」の運動要素からなりたっている。他の運動にもこれらの運動要素は含まれているが,陸上運動ほど強調されるものはない。それだけに陸上運動で養われた「走」「跳」の技能,敏しよう性,瞬発力,持久力は他の運動への支えとして役だつものである。

2. くふうする学習

体育科は,あくまで身体活動をとおして自分の運動技能を身につけていくものである。この運動技能はひとつひとつのかなり客観的な技術を総合したものであり,このような技術はできるだけ児童に自分の力で,あるいは集団のカでみつけださせるようにしなければならない。走り高とびを例にとると,助走の角度とか,空間の動作の腕の使い方を児童が自分のカでみつ


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