福島県教育センター所報ふくしま No.15(S49/1974.3) -008/030page
学習指導結果の統計的処理について
ー指導資料の考察のしかたー
研究・相談部 田 子 良 顕
1.はじめに
統計が現代人の生活に深い関連をもつことは,われわれの日常生活を見わたしても直ちに理解されることである。ことに,科学的な研究や調査に従事するものにとっては言うにおよばず,身を教職におくものにとって,統計的なものの考え方や統計的方法を身につけることは必要欠くべからざることである。
小学校の学級または学年内でいろいろな学力検査を実施するが,その結果を事後指導のための診断や治療に役だてることは,学習指導の効率化及び正しい評価という面から非常に重要なことである。
集団の特性について観察・測定した結果を“なま”の資料を見ただけでは,その集団の特性や傾向をとらえることはできない。これをとらえ易いように整理する必要がある。その整理のしかたは,観点によって種々異なるが,ここでは,累加度数分布についてとりあげ,累加百分率とバーセンタイルの利用のしかたについて述べる。
2.累加度数分布
(1)累加度数
度数分布表においては,おのおのの級間に含まれる度数が別々に示され,その度数を合計したものが全測定数となった。
<第1表> 累加度数分布表 級 間 上限点 度数 累加度数 95−99 99.5 1 120 90−94 94.5 2 119 85−89 89.5 11 117 80−84 84.5 18 106 75−79 79.5 31 88 70−74 74.5 21 57 65−69 69.5 13 36 60−64 64.5 8 23 55−59 59.5 8 15 50−54 54.5 3 7 45−49 49.5 2 4 40−44 44.5 2 2 計 120 このような,級間ごとにまとめた度数分布表は,資料の解釈に役だつことは既に理解されているところである。たとえば,教職員を構成している30才代のものが何名であるかを知ったり,テストの得点で40点から50点までのものがその学年で何名いるかを知ることができる。しかしながら単に級間ごとに資料をまとめるほかに,別の表示法が時には必要なこともある。すなわち,先の例からいえば,30才未満の教職員は何名いるか,あるいはテストの得点が60点以下の生徒が何名いるかを知ろうとするときである。このようなときには,度数を累加していけばよい。第1表は,120名のテスト得点の累加度数分布表である。
累加度数分布表は最下段の級間の度数に,つぎの級間の度数を加えるように積み重ねていけばよい。それで累積度数分布表ともいわれる。この累加度数分布表をみることによって,70点未満のものが36名あり,85点未満のものが106名いることが直ちにわかる。なお厳密にいえば第2欄に示したように上限点以下ということになる。
累加度数分布表から分布曲線を描くと第1図のようになる。この曲線は,分布が正規型又はそれに近いとS字形をなす。それで,この曲線はとくに"S字曲線"と言われる。
<累加度数分布曲線の特徴>
この型の図示をすれば,中間数,四分偏差が容易に判明する。すなわち,縦軸に測定数の半分の60(N/2)の点をとり,この点から水平線を引き,曲線と交わった点から垂線を横軸にくだせばよい。このときの中間数は,おおよそ75.0になることがわかる。同様にして,第1四分偏差(Q1 数字1は、小文字),第3四分偏差(Q3 数字3は、小文字)もわかり,それぞれ67.2,80.1のあたりということになる。
(2)累加百分率
度数の累加のみならず,その累加度数の百分率を示すことは,種々の理由で有用である。というよりは,この