福島県教育センター所報ふくしま No.15(S49/1974.3) -011/030page
指導要録「行動評価」についての一考察
研究・相談部 佐 藤 守 男
1.はじめに
高等学校の指導要録が新しくなり,行動および性格の記録の方法および様式にもいく分かの改訂がみられた。いうまでもなく,指導要録は20年間の管理保管が義務づけられている最重要公簿であり,生徒の一人一人の進歩発達の記録が全人格的にとらえられた上で記録され,保管保存されなければならないものである。したがって,その記載については細心の注意が払われ,厳正な観察評価に基づいた 1 学習(学力) 2 知能 3 性格 4 身体 5 環境 6 適性 7 行動 などの諸評価の全てが記載されなければならない。ところが,7の行動の評価は,他の領域の評価にくらべ,測定の方法の困難さがあるので,ややもすると軽くあつかわれがちである。このような観点から,昨今まで各学校で行なわれてきた「行動の評価」の方法を調査し,分析を加えながら,新指導要録の精神に即した方法はいかにあるべきかを追求してみた。
調査 I
本調査は昭和47年7月,福島県内99の高等学校を対象に実施したもので,回収率は85校,85.9%であった。以下アンケートの項目にしたがって集計と分析を述べてみる。
回答校数
%
A
13
15
B
27
32
C
28
33
D
3
4
E
2
2
F
22
26
G
24
28
H
12
14
1.行動の記録の評価は……(○で囲んで下さい。○はいくつついてもよいです)
A. 原案を全職員で検討した上で決定している。
B. 原案を各学年の関係職員で検討した上で決定している。
C. 原案を当該クラスの授業を受け持つ教職員とH.R.T.が検討した上で決定している。
D. 原案を生徒指導部係員とH.R.Tとで検討した上で決定している。
E. 原案を教務部係員とH.R.Tとで検討した上で決定している。
F. 観察カードやテストを利用した上でH.R.Tが検討を加え決定している。
G. H.R.T独自の考えのみで決めている。
H. その他の方法で決めている。……紙数の関係で各校の意見は省略
項目1は誰が行動評価を実施するかを調べるためのものである。この集計資料から判別できることは,評価の公正さを期するために,複数の関係職員による評価方式が多くとられているのが目立ったことである。しかし,H.R.T独自の考えのみで評価を決定している学校が24校,28%,観察カードなどを利用するが,H.R.T一人で評価を処理している学校が22校,26%にもおよんでいることは,早急に改善されなければならない点であろう。
回答数
%
A
39
46
B
13
15
C
31
36
2.行動の記録の原案を作成する方法は
A. テストを利用している。
B. 観察カードや観察記録簿を利用している。
C. その他の方法で行なっている。
(紙数の関係で例文は割愛
問2は,行動評価の原案作成の方法に関する設問であるが,本調査項目からは次の推論が得られよう。すなわち,各学校とも評価の適正化を図るため,多大の努力が払われているようだが,1)行動評価用のテストも,その目的に完全に合致したものを利用している学校は皆無である。2)日常の観察を十分に活用しようと心がけているようだが,その観察の方法,組織,および結果の処理も不十分である。
3.行動記録の評価は(○で囲んで下さい)説明があれば御記入下さい。
A. 絶対評価的な方法で行なっている。(
B. 相対評価的な方法で行なっている。(
C. 絶対評価と相対評価が混入された方法で行なっている。(
回答数
%
A
42
49
B
10
12
C
32
38
紙数の関係でCの例文は割愛
間3は,行動記録の評価が絶対評価的方法で行なわれ