福島県教育センター所報ふくしま No.15(S49/1974.3) -014/030page
特 殊 教 育 光を掲げて
ー在宅心身障害児の訪問指導についてー
研究・相談部 木 下 宇 平
1.はじめに
日本国憲法では,教育は国民の基本的人権(funda-mental human rights)の一つである。教育に関する憲法原則を定めた憲法第26条には,「すべて国民は法律の定めるところにより,その能力(their ability)に応じてひとしく教育を受ける権利を有する」と定められている。
教育を受けるということは,今日では明治憲法の「臣民の義務」という発想とは異なり,権利意識としてとらえられている。
しかしながら現実には,なお建前とは別に,精神薄弱や脳性マヒなどの重度の心身障害のために,就学猶予や免除となり,学校教育のらち外におかれ,在宅のまま久しく光を求めている学齢の子女が決して少なくない。
本県においても,これらの在宅必身障害児の就学権を保障するために,今訪問による指導の手がさしのべられようとしているが,その現状と課題とはどのようなものであろうか。次に若干の考察をしてみたい。
2.訪問による児童・生徒の指導の現状と間題点
学校教育法によれば,学齢(School age 6−14歳)の女子をもつ保護者には一律に,小学校・中学校・盲学校・ろう学校・養護学校の何れかに就学させる義務を定めている。義務として就学させる(Compulsory Education)関係上,子女の就学時における心身の状況には特に慎重な配慮が必要である。
都道府県にあっては,学齢の子女が政令で定める程度の精神薄弱(the Mentally retarded),肢体不自由(the Crippled),または病弱(the Health impaired)の児童・生徒のために,養護学校を設置することを義務づけているが(同法71条),この法律の義務に関する部分の施行日は「政令で定める」(同法93条)となっているにも拘らず,盲・ろうを除き養護学校については政令未公布である。従って現在のところ,障害を有する子女の保護者の養護学校への就学義務は,法的にbinding authorityは生じないが,原則的には小・中学校へ就学させなければならないことになる。しかし,学校教育法は普通の健康児を対象とするため,これらの障害児は就学困難の故をもって,就学猶予・免除となってきたものが大方である。
(1)本県の就学猶予・免除の状況
それでは,本県の就学猶予・免除の現状はどうであろうか。昭和48年度の学校基本調査によってみると次のようである。
年齢 \
種別
6
7
8
9
10
11
計
12
13
14
計
合計
就学免除 6 13 16 8 6 12 61 12 12 20 44 105 就学猶予 50 24 25 24 18 17 158 17 21 37 75 233 計 56 37 41 32 24 29 219 29 33 57 119 388 昭和47,死亡者数 4 8 9 5 6 6 38 6 4 5 15 53 S48,5,1.福島県統計課
就学免除者は小学校61名,中学校44名,合計105名である。就学猶予者は小学校158名,中学校75名,合計233名であり,両者の合計は338名である。これは本県の小・中学校児童・生徒298,687人の約0.1%にあたる。
本県の猶予・免除児338名の70%はeducableなものが多く,その義務の履行を一時待ってやれば就学見込のある場合の取扱いである。これは教育内容や方法を考える上で重要である。
次に,これを管内別にその概要を見ると次表のようであり,養護施設(学校)を検討する上からも意味があろう。
県北
県中
県南
会津
南会
相双
いわき
合計
就学免除 36 27 11 22 0 7 2 105 就学猶予 48 53 13 39 7 26 47 233 計 84 80 24 61 7 33 49 338 昭和47年度.死亡者 16 5 13 10 0 9 0 53