福島県教育センター所報ふくしま No.15(S49/1974.3) -015/030page

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またこれを種別毎にみると下表のようである。これは全国的傾向と同じであり,今,養護学校の義務制が進められている中で,配慮すべきことは,この種の教育は障害の種別によって行われるべきであるが,法律的には何ら種別に応じた学校の区別をしていないことである。新しい養護学校の学習指導要領の精神にそって,「政令で定める程度のものを就学させるに必要な‥‥‥養護学校」とは,精神薄弱,肢体不自由,病弱の三種の学校の設置義務と解すべきであろう。

 

就学猶予者

就学免除者

精神薄弱 123名 75名
教護院・少年院 32名 3名
肢体不自由 27名 13名
病・虚弱 24名 11名
その他 27名 3名
合  計 233名 105名

最近では就学猶予・免除返上運動も目立ち,重症の障害児にも就学権の保障をという叫びとなっている。

本県においても,放置すれば永遠に自己の権利も,正当な社会的処遇も受けられないこの子らに対して,教育サイドから訪問による指導が準備され,その実行が待たれている。このことは各都道府県においても事情は同じことと思われるが,今,その全体的傾向をみてみたい。

(2)「訪問による児童・生徒の指導」実施状況(全国)

ではここで,文部省特殊教育課の昭和48年度「訪問による児童・生徒の指導」実施状況調査(昭48.4.10文初特第249号)からその概要をみてみよう。

(注)この調査時点は昭48.5.1で本年度実施予定も含む,これは義務教育段階のみで東京都は含まない。全体集計の統計と平均は便宜上筆者において集計した。平均は回答県数についてのもの。

1.実施県・実施主体数

訪問による指導を実施しているのは,46道府県中39県である。その実施率は82%である。未実施県は,青森,山形,福島,三重,佐賀,大分,沖縄の7県である。県主体で実施しているもの13県,市町村主体で実施しているもの15県,県・市町村の両段階で実施しているもの11県である。実施主体数では,県主体24,市町村主体77,計101となっている。46道府県中,52%が道府県教育委員会の段階で実施されている。

2.対象者の学籍の取扱い

対象児童生徒4,019人中,学籍を与えているもの1,488人(37%)で,残り2,531人(63%)は学籍を与えていない。また,学籍を与えた1,488人の内訳は,小・中学校籍にしているもの263人(18%),特殊学級籍215人(14%),学籍はあるが内容不明1,010人(68%)である。これで一応学籍を有するものは不明も含めて全体の37%でまだまだ低い。東京都においては昭和49年度から訪問対象児全員,学校籍で行う旨きいている0訪問による指導は今,全国的視野に拡大されている。昭和47年5月1日現在,この教育の未実施県は18府県であったが今年に至り7県に減少したが,対象児の大部分は学籍を与えられていない。このことは学籍を与えることについての取扱いの困難さを示している。即ち教育課程の問題(中でも,「見做し」教育論への批判),指導教師の問題,スクーリングの問題,施設設備の問題,予算措置の問題等でもあろう。

また,実施県のうち対象者の最も多いのは神奈川県の885人,愛知県884人,大阪366人,千葉148人,山口140人である。なお,長野,岐阜,新潟,高知,宮崎は対象者すべてを小中学校籍にしている。京都・鳥取は特殊学級籍である。神奈川,大阪,山口は先進県であるが学籍を与えていない。愛知は何らかの形で与えている。千葉は半数以上与えている。各県の状況では現在のところ,無学籍の方が稍多い。重症児も学籍を有し,スクーリングも可となれば文字通り,Happiness is Going to School.となろう。

また文部省が先に行なった6−7歳児の就学猶予免除児の実態調査の総数は9,263人で,このうち37%は養護学校や施設に入所したが,残り63%は在宅のまま,光はさえぎられている。この父母の42%は「何とか学校教育を」と切望している。それは学籍をもたせてという哀願でもある。昭和47年4月,政府は国会において養護学校の急速な整備を約束し,学籍をもったままの施設通院や施設入所を認める(従来は就学猶予・免除が入所条件)と答弁している。今後は学籍を与える方向で検討されるだろう。

3.指導者について

実施県の指導者の総数は635人である。各県は学校教員,指導員の両者で行なっている。内訳は学校教員134名,指導員501名である。学校教員は所属校において給与をうけながら(全員常勤)と思われるが,指導員の場合は常勤は福岡・茨城などの2県で50名である。他の451名は非常勤である。

学校教員を指導者とするものは千葉15名,京都14名,兵庫19名,高知16名などである。指導員では神奈川の151名が最も多く,愛知106,静岡25などの順である。全国的には指導者の71%は非常勤の指導員でまかなわれており,21%が学校教師である。常勤の指導員は8%にすぎない。指導員の大半はもと学校教師・保健婦,福祉関係職員などがあてられているものと思う。

4.予算について(単位千円)

実施県39県の総題は4億6千万円(466,022)である。昨年の予算総額229,493に対し,2.5倍の増である。特に神奈川の162,555,愛知90,772,大阪38,681,京都30,983,福岡14,124は最も多く,先進県である。内訳は人件費総額406,169,教材費総額16,654,旅費総額31,476,その他(文具費,通信費,消耗品費,印刷製本費などの需要費)11,723となっている。割合では全体の87%が人件費である。教材費は4%,旅費7%,その他2%である。実施県の予算額総計の平均は13,706であり,人件費は14,506,教材費641,旅費984で,その他651である。人件費では指導員501人に対し(学校教師は除く),月額68を支給していることになる。教材費は愛知の4,784,千葉1,500,長野1,175,栃木1,099,北海道1,059などは多い。

旅費については指導員の平均年額66程度である。


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