福島県教育センター所報ふくしま No.16(S49/1974.6) -002/025page

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学習指導の最適化をはかるための手だて

ー主題研究にあたってー

研究・相談部

I 主題の設定

学習指導の改善・充実のためには,これまでも努力されてきたが,学習指導には多くの条件がかかわっているだけに今後の努力が望まれる。その視点として,

 ○教科の本質に即した教材研究と質の高い授業展開
 ○指導内容重点化のための適切なくふう
 ○指導法の多様化と教育機器の効果的導入
 ○学業不振児童・生徒への適切な配慮
 ○自主的・自発的な学習態度の育成
 ○指導体制の確立と教師の特性発揮

などがあげられる(「学校教育」No.85)このことから,学習指導の改善・充実の方向は,学習活動を最適な状態で展開していくために,学習指導を構成する要素をどのように関連させ調整するかにあると考えられる。

このような点から本年度は「学習指導の最適化をはかる手だて」に研究主題としてとりくむことにした。

「学習指導の最適化」は,授業改善のために教育工学的研究が重視され,授業システム化やそれを可能にする教授・学習活動の相関分析が大きな役割をもつようになって一層間題視されるようになった。しかし概念内容など必ずしも一般化されているとは限らない。

II 学習指導最適化の理論

ここに学習指導の最適化に関する理論を三氏の著書から抜すいしてあげる。

 ● 中嶽治磨,小川正,白木実編「最適学習方式」
   (三晃書房)

子どもたちの最も好ましい学習の進め方を問題にするもので,指導や教育環境の整備,子どもの学習活動などを,所与の条件のもとで最大の学習効率が期待できるように科学的・合理的観点から調整(構成)することをねらうものであると述べている。

最適学習方式の授業を創造するための観点として,基本的立場から

 <1> もっとも好ましい学習の進め方を見いだすこと
 <2> 上の<1> にもっともよく適合した指導作用を構成すること

が主要な課題であるとし,このために,最適な計画と指導のあり方が吟味されなければならないとしている。そしてこれは,教師の指導(行為)そのものを研究の正面にすえ,指導を科学的たらしめるために「的確な予測に基づいた合理的な指導を可能ならしめる計画」を重視しなければならないし,授業研究をくりかえすことによって,授業の基本過程とその成立を促す諸条件のあり方を明らかにしていく必要があることを指摘している。

このようなことから,最適学習方式にせまるストラテジーを「授業の基本過程」と「成立を促す諸条件」のふたつの面から追究し,これら両者を統合することによって最適な計画と指導のあり方を究明しようとしているものといえる。

さて,課題をこのように限定してとらえたとしても,与えられた条件のもとで長期的な視野に立って最大化された個々の子どもたちの学習効率とは具体的にはどんなものであるかを的確に指摘することは困難である。そこで,1単元の指導,1時限の授業,さらには授業のどの分節といったような一部分について,あるいは対象となる子どもは上・中・下位群のいずれであるかの限定をした上で,その学習効率の最大化をはかるということが考えられる。このような最適化を部分的最適化とよぶとのべている。部分最適化の立場から,いくつかの基本的な考え方について,論述されているのでその要旨をあげてみる。

(1)授業の基本過程について

授業は,教師・子ども・教材の3つの要因から成立しているが,この関係構造を明らかにするために,学習の理論をふまえた学習の進め方と,教科の理論をふまえた指導作用との接点にあたる学習活動を,授業の目標を達成するためにどう調整(構成)すべきかの視点にたって究明しなければならない。

最適学習活動は

 <1> 目標への通りやすい道(到達しやすい方式)に従った学習であり
 <2> 学習の時間や量が,少なくてすみ
 <3> 安全に目標へ到達でき
 <4> 到達した目標への定着や,将来の発展が容易であり
 <5> この道を通ったことが,将来の学習に種々の面で有効である

などの諸点から,他の学習活動に比較してどうであるか


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