福島県教育センター所報ふくしま No.16(S49/1974.6) -005/025page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

即して最適化してみると,基礎教科には記号化学習,内容教科には認知学習,芸術教科には表現学習,技術教科には操作学習の学習過程がそれぞれ生じてくるとし学習過程への段階を示している。

また題材内の内部項目間が,論理的順序をなしているか,それとも順序不同ないしは心理的順序をなしているか,その視点からみる。

前者の論理的順序の場合は,本段階の内部項目を要素から複合へ単純から複雑へ,先行要件から後行要件へなどの原則にしたがって順序だった配列をすることが必要である。後者の場合には,本段階の内部項目を手近なものから遠いものへ,具体から抽象へ,未分化から分化への原則にしたがって心理的に巧みな配列をすることが必要であるとのべている。

(6)発達に即した最適化

次に最適化の第3段としてさきに基本過程→高次目標変数→4つの教材変数の累積=順列結合によって生じた4つの学習過程にたいしてこんどは発達変数を累積することをのべている。著書では基礎教科変数の順列結合によって生じてきた学習過程だけに限定してのべている。小・中学校の学習者の発達変数を大別すると次の4つの変数をとりだすことができるとして

1 具体操作の前期(低学年期)−<1> 作業学習
2 具体操作の中期(ほぼ中学年期)−<2> 映像学習
3 具体操作の後期(ほぼ高学年期)−<3> 半具体次元の映像学習
4 抽象操作の前期(ほぼ中学校期)−<4> 抽象学習をあげている。

基本過程→高次目標→基礎教科の累積によって生じた記号化学習過程を4つの発達変数に即して最適化するとそれぞれ@〜Cの学習過程が生じてくるとしている。低学年の場合は,なんらかの遊びのかたちをとって学習にはいることが多い。遊びの中で課題をもつこと。つぎに作業しながら課題を解決すること。そして実地に活用すること。つまり作業を主とした学習過程となることが多い。

(7)ひとりひとりの最大成長

これまでの順列結合によってかなり具体的な学習過程をとり出す道が開けてきたので,もう一歩進めて個人差にそくした学習過程をとりだすようにしたいものである。

ところで個人差は,きわめて多様な変数となるため,これまでのような順列結合の方式によって最適化していくことは困難である。したがって個人差に即しての最適化は,順列結合による最適化の成果の上にたって,これをケース・パイ・ケースに生かしていくしかたが主となってこよう。そこでこうした仕方での個人差にそくした最適化をおこなおうとするさいに,重要になってくる2つの問題をあげている。その1つは「個人差のみつけかた」で,その第2は「個別学習の諸形態」の問題である。

個人差のみつけかたは,認知両に重点をおき,主として素質面の知的能力を測定するための知能検査,習得した知的能力を測定するための学力検査がある。だが知的能力の個人差をより具体的に,そしてより生々しくとらえようとすれば学習方略(学習課題にたいしてどのように接近し,そしてどのように解決するかのしかた)の個人差をみつけようとするのが,おそらく一番すぐれた方途であろうとのべている。

第2の「個別学習の諸形態」では4つの形態をあげている。さいごに単独の変数に即する最適化の研究をのべているが、やがて変数システムに即した最適化の研究へと進むのが最適化のよい手順であろうと結んでいる。

 第1 集団の中での個別学習
 第2 能力別学習
 第3 プログラム学習
 第4 コンピューター学習とおさえられている。

 ● 波多野完治・依田新・重松鷹泰監修「学習心理ハンドブック」(21章学習指導の最適化)(金子書房)

(1)学習指導におけるATI

学習指導の方法が一般的に妥当であるか否かでなく,どのような場合にどのような学習指導がどのような学習者に対して妥当であるかという学習指導の最適化の方法であるとして,学習心理学者の研究結果をあげている。

 <1>  ATIの概念

最適な学習効果をあげるための指導方法が学習能力の型によって異なる。すなわち能力の型(適性)によって,与えられた指導方法(処遇)に対する反応の仕方が異なるという現象を,適性処遇交互作用(ATI)と呼んでいる。

ダンハムとパンダーソンの研究報告によれば,ある種の指導が,ある種の能力の型を持った者に対してはプラスにはたらくのに,他の種の能力の型を持った者にはマイナスにはたらくことがあることを示している。

このようなことが普遍的に存在するならば,能力の型にあわせて学習指導の方法を分化させることが当然必要になるとのべている。

 <2>  学習指導におけるATI

タナカ(Tanaka,Masako)は,小学校1年生を対象に,対象分類課題に関する指導を行なった。

その結果は図1のようであった。この図によれば,指導しなかった統制群の回帰とA方法群の回帰とはほぼ平行であり,この差がA方法による指導の効果とみなされる。これらに対し,B方法の指導においては,事前テストの得点12点に達しない者にたいしては,マイナスの効果しか持たないことになる。すなわち,不適切な指導が


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育センターに帰属します。