福島県教育センター所報ふくしま No.16(S49/1974.6) -006/025page
単に効果が少ないというにとどまらず,有害であることを示しているとのべている。
図1 指導方法と事前テスト得点との交互作用(Tanaka,1968)
<3> 人格その他の因子の関与するATI
スノウ(Snow R,E,)らは,教育映画の効果に関するひとつの実験一映画によって教えるのと,教師が直接教えるのとの比較ーを行なった。
独立変数としてさまざまな16の個人特性を導入し,その交互作用を検した。図2によれば,対人的積極性の高い者は,教師による指導の方が成績がよく,低い者に対しては,映画による指導がよいことを示している。
指導法と責任性との交互作用は,これとは逆の形になっている。
図2 指導法と生徒の性格との交互作用(Snow,ほかによる)
そうすると,対人的積極性と責任性の両方とも高い者,両方とも低い者,一方が高く一方が低い者は,それぞれどうかということが問題となる。それには3次元の交互作用を考えなければならないとのべている。
(2)最適化の実際
<1> 最適化の諸形式
学習者により,内容により,教師により,またその他の条件により異なった学習指導を行なう必要がある。それぞれの場に応じ最大の効果が予想される指導方法を見い出すことが最適化であるといっている。著者はクローンバックの個人差に対する適応方式をあげ解説するとともに,最適化という場合,集団の平均的学習効率や,その分散を基準とする集団最適化と,各個人の学習の期待値や,学習失敗のリスクを基準とする個別最適化とが区別される。また各時点の反応にもとづいて次の時点における指導を決定する短期最適化と,長期の資料にもとづいて長期的な指導方法を決定する長期最適化とが区別されるとして研究の方向をしめしている。
<2> 学習理論にもとづく最適化
1っの方略は,特定の学習現象に関する理論的なモデルから出発するものである。スッピースらは,リストの学習系列の最適化の基礎として,簡単なモデルをたてた。その結果は,学習係数と忘却係数のバランスによって最適な学習ブロックの長さがきめられるとのべている。<3> 試行錯誤的最適化
上記と対照的な方略は,授業における指導過程を分析記述し,一方で学習者の達成度を評価し,誤りを分析し,その誤りのよってきたる指導過程の分節を改善するという試行錯誤的かつアクション・リサーチ的な方法で,特に意識しない形で指導案の検討にも,プログラム学習の改善にも用いられてきた方略であるとのべている。中嶽・小川・白木による最適学習方式はこの立場からの構想であり,
この方法でもっとも問題なのは,与えられた集団に対しての最適化であって,個人に対する最適化ではなく,個人の特性は互いに打ち消され,心理学的な理解や理論の深まりとは縁のうすい最適化におわるおそれがあることを指摘しながらも現実のもとでは,実用的な意義は十分に認めるべきであるとのべている。
<4> ダイナミックな折衷方式
上記の2方法の中間に位するものは,スモールウッドがプログラム学習の枝分かれを個人差に応じて決定してゆくのに試みた方法であるとして,
この場合,個人差は過去の諸フレームに対する正答率というきわめて不完全な押さえ方にとどまっているが,それぞれの測定を提供する方法さえあれば,この考え方は個人差のすべての次元に関する最適化に適用できるとのべている。
以上の理論については別な立場からの意見も多い。
当センターにおけるこれからの研究は,ある学者個人の理論によってすすめるものでなく,多くの学者による理論や意思をくみとり,さらに本県教育の現状を考えてすすめようとするものである。
III 最適化の基本的な考見
主題研究にあたっては「学習指導の最適化」をすすめるために必要な,最適化のねらいや学習指導の要素等の基本的なことについてどう考えるかをおさえておくことがたいせつであろう。
(1)学習指導最適化のねらい
学習指導の最適化は,「ある日標をもって営まれる学習指導が,与えられた条件のもとで,学習指導に関する諸要素の機能や相互関連を明確にして,最適な状態に組織し調整すること」であり,そのねらいは「個々の子どもの学習効率が最大になる」ような授業を計画し,展開することにある。
また最適化の問題は,指導に万能な方式や理想的な指