福島県教育センター所報ふくしま No.16(S49/1974.6) -007/025page

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導を追い求めるというよりは,与えられた条件のもとで指導上のさまざまな問題の解決に精一ぱいの努力をはらい最善と考えられる授業を展開することに意義をもつものでる。

(2)学習指導の要素

学習指導は基本的には,授業の展開場面における教授活動を指すものであるが,これを目標決定…教授の計画…教授活動,学習活動…評価,という一連のものとしてとらえた場合,学習指導の要素として次のようなことが考えられる。

 ○学習目標………(目標の種類)
 ○学習内客………(教材の選定,構成,特質,学習量,系統,学習資料)
 ○学習過程………(学習の段階,内容の配列,教師の活動,児童生徒の活動,学習時間)
 ○学習方法………(学習形態,学習集団,機器,教具)

授業は多様な要素が複雑にからみあって成り立っているものであるから,さらに次の要素も含めて考えたい。

 ○学習者………(個々の能力・特性,発達段階,学習訓練)
 ○教 師………(教師の特性,指導技術,協力教授)

(3)部分の最適化

学習指導は,これらの要素が極めて複雑な有機的関連をもって統一されているものであり,広範な内容のものであるから,学習指導の最適化をはかるこころみは,実際的には極めて至難でありまとまりを欠いたものになることが懸念される。そこで学習指導の一部分を対象にした最適化(たとえば,学習形態の最適化,学習内容に即しての最適化,1時間とか1単元の指導という一部分での最適化など)をはかることも考えられる。

部分的最適化は,いかに部分とはいっても学習目標,児童生徒の条件,教師側の条件を欠いては実践の場では意味のない考察であることに留意しなければならない。

当センターの研究もこのような部分的な最適化についての研究をとおし学習指導の最適化にアプローチする方法でなされている。

〔例〕○学習目標や内容の吟味と教材構成を中心にしたもの。
   ○学習資料,教材・教具の整備と活用などの学習条件を中心としたもの。
   ○指導の効率化や指導過程を中心としたもの。
   ○学習における集団化や個別化を中心としたもの。
   ○授業の成立や学習訓練的な要素を中心としたもの。
   ○創造的,探究的な発見により児童・生徒に主体性をもって学習に取組ませる手だてを中心にしたもの。など。

IV 研究上の要点

(1)要素の決定

さきに学習指導の要素と部分的最適化についてのべたが,実際上はどの部分の最適化を研究対象とするかによって,いろいろな要素が考えられるから,研究対象に即して何を要素として選び出すかが1つの重要な作業である。また,所与の条件として何をどの程度までにするかもあわせて考究すべき点である。

(2)要素の性格や内部構造の吟味

要素の組み合わせを最適にするためには,それぞれの要素について,たとえば学習過程は本質的にどんな性格をもつものか,学習形態の特性とその適用,どんな観点で教材を分類すればよいかなどのように要素内部の構造を十分に吟味する必要がある。

このことによって,研究の重点が整理され,所与の条件や要素相互の関数的関係が的確に考察できる。

(3)要素を構成する。

要素を組み合わせることは,研究の深化により分化されたものを逆に総合し構成することであるから「どのようにして総合をはかるか」が重要な視点となろう。

(4)目標や指導計画の吟味をする。

最適化は学習目標に応じて行なわれる作用であるからどのような学習目標にするかを徹底して吟味する必要があろう。また目標とともに十分に吟味された最適な指導計画を立案することが重要な仕事である。

このような吟味には学習指導システム設計の一般的手順として用いられている内容の順序づけや方法のわりつけの一部を参考とするのも1つの方法である。

V 学校における最適化の研究

学校現場での研究には制約もあるので,そのままの形でなく,方法をくふうして研究する必要があろう。

(1)条件の限定

「〜の学習者に,〜の内容を,〜の方法で」という条件の限定を加えて実践研究にあたる必要があろう。

(2)要素の変化に即した組み立て

最適な方法は常にひとつとは限らない。要素の関連が変わるに伴い,いくらでも考えられるもので方式や固定化にこだわらず,要素に応じて柔軟な組み立てをくふうすることが重要である。

(3)方式と要素の統合

すべての指導方式に精通することは容易でない。自分の精通しているひとつの方式を中軸に研究を深め他の必須の諸要素をこれに統合する方法が実践的には効果的でなかろうか。

(4)実証的な授業研究

学校では今までも指導法の改善に努力を重ねられたが,従来の研究はひとつの側面(観点)から技術的・主観的になされた傾向が強かった。授業の要因を抽出し総合的に操作することや数量的に測定して授業を診断する点等に欠けていた。「最適化」の研究を導入するならば,従来の研究とあいまって,指導法の改善に大きな力を与えることとなろう。

本稿では「最適化の手だて」についての方法的提案は行なわなかった。この点は今後の研究にゆだねられている課題である。本号から20号にわたり発表される内容について御批判いただければ幸いである。


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