福島県教育センター所報ふくしま No.16(S49/1974.6) -008/025page

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小・中共通教材

「資料活用能力の評価」の現状と問題点

第1研修部 西谷地金成

○はじめに

社会科の学習がある限り,常に何かしらの学習資料が活用されないことはなかろう。わけても,現代社会の情報化進展の時代にあっては,知識の量よりも,情報資料を取捨選択しながら社会事象を考察できる社会的能力を効率的に育成することが,社会科の学習指導の最適化に最も要請される性格であろう。

しかしながら,このような基礎的能力である「資料活用の能力」の育成が,はたして現場の実践ではどう展開し,どう評価が行なわれているのだろうか。ここに,現場実践の調査データーを考察しながら,「資料活用能力の評価」の方法と問題点を究明し,それの改善策の方途を見い出したいと思う。調査方法は昨年度の小・中学校社会講座で提出していただいた資料による。

○「資料活用能力の評価」の観点

まず,『「資料活用能力の評価」の観点』の問いに対して,〔表1〕のような解答が得られた。

結果としては8つの観点に絞られたが,一般的に基礎的な観点としてあげられている,〔表1〕の(1)と(2),については,小・中学共に約50%の学校が評価の観点としてあげている。次に頻度の高い観点として,(3)と(4)とが共に約30%ぐらいを占めていることは,資料作成の能力または表現力を観点としたものになると,中学校よりは児童の活動を中心とする学習形態をもつ小学校の方が高い数値を示している。


〔表1] 「資料活用能力の評価」の観点をどうおさえているか(調査杖…小学〜80校・中学〜80校)

校別

観点

小学校

 

中学校

 

平均

 

(1) 資料の収集・選択ができるか 68 51 60
(2) 資料を正しく読みとることができるか 50 40 45
(3) 資料を分析したり再構成することができるか 45 20 32
(4) 資料を自分の力で作成することができるか 33 24 30
(5) 資料から問題を解釈することができるか 17 25 21
(6) 資料から仮説を立てることができるか 14 17 15
(7) 資料のもつ信頼度や限度がとらえられるか 20 9 14
(8) 資料に興味を示すか 3 4 3

逆に(5)(6)などの高度な観点は,やはり小学校より中学校の方が数値が高い。にもかかわらず,(7)の資料の吟味力をみる観点は,むしろ小学校の方で重視されている。

最後に,総合的に考察すると,各学校の観点が,(1)より(8)までバラついたと判断しても,最も基礎的な観点である(1)が,小学校でさえ68%であるから,約30校は「資料活用能力の評価」を計画的に実践されていないので,無答になったものと考察せねばなるまい。そのことは,(2)の数値と合わせ考察すると,「資料活用能力の評価」以前の「資料活用能力育成」の計画さえ,指導の中に位置づけされていない学校がまだまだあるという実態である。

このような問題点の改善策としての第1は,社会科学習の性格を再認識し,資料による社会科学習であることを再認識することであろう。第2は,資料は学習者である子どもの思考活動の対象であり,子どもはその資料に働きかけて思考し判断していくものと再認識するとき,資料の活用は子どもたちが主体的に思考し判断していく学習過程での計画の必要性を再確認することであろう。第3に,現行の社会科の評価が単に知識・理解だけでなく,能力の面の評価がより以上に重要なものと再認識するとき,特に資料活用能力の評価は,学習の結果よりは主体的な問題解決の過程で行なわれる計画をたてるべきである。最後の第4として,それらの能力の働きを効果的に評価するためには,その観点を明確にし,資料活用能力を多面的に分析し,要素能力を的確にとらえ,学習目標ヘアプローチすべき学習のプロセスに即して観点を設定すべきである。

したがって,「資料活用能力の評価」としての観点は,固定化されたものではなく,−般的な観点とされる,<1> 資料を読みとる能力,<2> 資料を収集・選択する能力,<3> 資料を作成する能力の3つの観点を基礎として,学年目標や単元目標への到達手段としてより高次の観点を補足すべきであろう。もちろん,1つの観点はそのもの1つの観点からみるのではなく,目標に応じて1つの観点を更に細分化した観点を設定して評価することは,より効果的な実践化であることを付記しておかなければなるまい。

○「資料活用能力の評価」の評定

次に,『「資料活用能力の評価」の評定』の問いに対して,解答された結果が〔表2〕のデーターである。


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