福島県教育センター所報ふくしま No.16(S49/1974.6) -009/025page
その[表2]を考察すると,小・中学校共に(2)と(4)で主に実施されているが,学校総数の割合からみると,中学校で(2)と(4)がそれぞれ13%と低く,(1)より(4)の総%からみても31%であり,約70%の中学校では計画的な評定尺度が決められていない実状ではあるまいか。また,小学校を分析すると,(4)が19%であり,(2)は30%と高く,加えて,約60%の総%を考察すると,前節の「観点」の内容と同じく,小学校の実態に相応した妥当の線が考えられる。
[表2]「資料活用能力の評価」の評定を具体的にどうしているか(調査校…小学〜80校・中学〜80校)
校別
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評定
小学校
%
中学校
%
平均
%
(1) 2段階評定 9 1 5 (2) 3段階評定 30 13 21 (3) 4段階評定 3 4 3 (4) 5段階評定 19 13 16 しかし,小学校でさえも約40%の学校では,計画的な評定尺度もないままに,「資料活用能力の評価」の評定を無作為に実施していることが問題点ではなかろうか。しかも,これらの「資料活用能力の評価」の評定の数値を,教科評定の配点の中にどう具体的に位置づけるかとなると,確固たる自信のもとに行なわれている学校はほとんどなく,調査集計すべきデーターも得られなかった。大部分は教師自身の主観的な判断から適当に処置されているものと思われる。
このような評定の現状を判断すると,中学校の場合は「資料活用能力の評価」の評定については,現在のところ五里霧中の感が強いと考察せねばなるまい。しかしながら,学習の過程で「資料活用能力」が育成されたかどうか確認するためには,それなりの観点についての評価がなされなければならない。そして,その評価の数値をどう評定し,子ども自身の自己評価や指導法へのフイード・バックにどう役立てるかが大切な問題点であろう。
そのためには,観点の設定だけでなく,評価の基準となる尺度が確立してこそ,客観的で信頼度の高い学習効果の判定が得られるのである。それらの評価を累積し,分析総合した評定をすることが,前述の問題点の解決策であろう。しかしながら,これらの評定の仕方についての研究は一般的に少なく,また形式化された方法も有り得ない実状である。したがって現場における最善策は,その学習目標を達成するための最も良い評価・評定の計画を練りつくした実践の訓練から身につけることであると銘記せねばなるまい。
最後に,「資料活用能力の評価」の評定について,その留意点をあげたい。
・評定尺度の段階を決めるに当たっては,学年段階・学習の目標と内容・評価機会・集計処理上の観点から,実際に実践化できるものであって欲しい。いたずらに,4段階・5段階尺度が妥当的ときめつけないで,一般的な3段階方式を中心に,2段階方式なども十二分に活用してみてはどうだろうか。
・「資料活用能力の評価」の評定が,ただ単に,教師の主観によって指導要録の評価の所見欄に○×を記入する程度だけということは反省していただきたい。評価の3つの観点は,所見欄に○×をつけるだけのものではなく,むしろ,教科全体の評価の観点であることを再確認すべきで,その意味での改善策を得る実践を早急にして欲しい。
・教科の評定のとき,「資料活用能力の評価」をどの程度に加味するか,それについての固定化された基準はないが,おおむね社会科の性格を考慮するとき,「知識・理解〜50%」「観察力・資料活用能力〜25%」「社会的思考判断〜25%」の目安で,弾力的に計画されたいものである。
○「資料活用能力の評価」の方法
第3の問いである,『「資料活用能力の評価」の方法』を具体的にどう実践していますか,の解答が[表3]である。
[表3]「資料活用能力の評価」の方法を具体的にどのように実践しているか(調査校…小学〜80校・中学〜80校)
校別
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方法
小学校
%
中学校
%
平均
%
(1) 観察法 69 33 53 (2) ペーパーテスト 90 44 52 (3) 発表力 44 35 39 (4) ノート 46 20 33 (5) 作品 23 33 28 (6) チェックリスト 39 9 24 (7) 作業 14 8 11 (8) 資料収集 1 9 5 (9) 白地図 4 5 4 (10) アナライザー 1 1 1 その結果を考察すると,(1)は小学校69%に対し中学校33%と半減していることは,学習過程中における観察評価の実践の差を如実に物語っている。加えて,(6)の方法状況をみると,中学校9%でほとんど行なわれず,小学校でさえ39%と考察するとき,安易で場あたり的な観察