福島県教育センター所報ふくしま No.16(S49/1974.6) -010/025page

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評価はできても,観察データーを科学的に処理しようとする評価の困難性と,学習中に評価することの技術的な問題点のあることが結論づけられよう。

「資料活用能力」の評価で最も手っ取り早い(2)でも,中学校で44%の学校しか実施されていないことは,資料活用能力をみるテスト作成技術の関係や,このような問題を載せるスペースとか労作上とかの関係の問題点があるのではなかろうか。それにひきかえ,小学校の90%はそのまま好結果とうのみにできない問題点ではなかろうか。すなわち,市販テスト以外の自作テストがいかほど実施されているかという問題点である。いずれにしても,自作テストの技術的な作問研究の余地が十分あるものと考察せねばなるまい。

(3)による評価方法も,小学校44%ら,中学校35%らとかなりのデーターを示しているが,これも(2)との関連で考察すると,おそらくは自己流で主観的ないきあたりばったりの評価に終わっていはしまいか。それにしてもしかし,このような評価方法が曲がりなりにも実践されていることは前向きの姿勢になりつつあることで,大変望ましい傾向と思う。

次に,(4)・(5)・(8)・(9)の4項目は一括して作品による評価とみて老察するとき,小・中学校共に60%以上の学校で,これら作品による評価が実施されている。問題点は(5)が小学校より中学校が10%上回る点と,(8)の項目を合わせ老察するとき,(4)の評価の方は中学校より小学校の方が倍以上の数値を示していることは,小学校の方は学習過程に直結した評価が考えられるのに対し,中学校は学習前後の資料収集品や作品の評価に終わっていはしまいかと疑問になる点である。

その他,(7)における評価の数値の低いことは,グループ学習による個人の評価の技術の困難性を示すものと考察できよう。最後の(10)による資料活用能力の評価ができるようになれば,もちろん理想的で申し分ないところだが,これは現在のところ経費の点で問題にならない実状であろう。

いかに評価の観点が明確であり,尺度が確立されていても,評価の方法が適切でなければ,効果的な「資料活用能力の評価」はできまい。したがって,評価の機会はいろいろな過程で行なわれようが,最も大切な留意点としては,やはり学習指導過程中の評価に重点がおかれ,「観察」「発言」「作品」「テスト」その他の評価方法が有機的に配分され,具体的にどんな方法の組合わせが最も適切かと計画され,実践されることであろう。評価をするために,学習の流れを中断されたり,学習目標が見失われたり,子どもの主体的な追求を混乱させるような評価の方法にならぬよう留意したいものである。

○おわりに

社会科学習と「資料活用能力の評価」の問題点について,調査データーの分析考察を進めてきたが,資料活用能力がいかに社会科学習の性格にとって大事かがわかろうというものである。これほど社会科学習にとって,基礎的または重点的能力の育成はないものと思う。しかしながら,それほど大事な能力を果たして現場の実践では,どれほど育成され,その事についての評価が定着されているかとなると,ほんの一部の抽出された調査データーで考察したとしても,はなはだ心もとない感じを抱かざるを得ないのである。

学習内容に全くマッチした資料を,その学習過程にからめたシステム化を計り,子どもの反応をどう見,どう学習展開をフイード・バックしたら最も効率的・効果的な学習になるものか,できればフローチャート化した学習の最適化を計りたいものである。そのためには,1つにはその資料の質の精選に関することであり,他方には教師の指導のテクニックの可否によるものと思うと,大変むずかしい問題点ではなかろうか。これが改善策はただ1つ,これらの問題点を究明すべく試行錯誤をくり返しながら検討され,積み上げてゆく絶えまない研究があれば,〔表4〕のような問題点は自ら解消されていくのではなかろうか。

いずれにしても,「資料活用能力の評価」についての決定的な研究などは,本県はもちろんのこと,全国的にもまだまだ緒論にたった段階ではあるまいか。早急に結論の方向を見い出したいものである。

〔表4〕 「資料活用能力の評価」を実践なされたなかでの問題点を具体的にまとめてください(紙面のつごうで<2> 以下略)。

(1)資料活用能力の評価の計画上の問題点(小学校−96%,中学校−84%)

 <1> 資料活用能力をどう評価するのか現在のところ研究不足である。
 <2> 評価の観点を具体的に授業過程にどう位置づけるかわからない。

(2)資料活用能力の評価の技術上の問題点(小学校−91%,中学校−71%)

 <1> 観察が主観的になりやすく思いつきの評価になりやすい。
 <2> 評価測定が困難であり評価の尺度がわからない。

(3)資料活用能力育成上の問題点(小学校−54%,中学校−48%)

 <1> 資料を読みとるカの育成が不足している。
 <2> 進度との関係であまり資料による学習にばかりかけられない。

(4)資料収集処理上の問題点(小学校−49%,中学校−45%)

 <1> 資料の精選が困難である。
 <2> 資料収集作成の時間が雑務が多くてとれない。

(5)資料活用能力のペーパーテスト評価上の問題点(小学校−14%,中学校−23%)

 <1> 資料活用能力の評価はペーパーテスト中心になりがちである。
 <2> ペーパーテストに図表,資料を入れることは技術的,量的に困難である。


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