福島県教育センター所報ふくしま No.16(S49/1974.6) -011/025page

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中 学 校 教 材

確率指導における教材展開の最適化

ー実験と理論の接点を中心としてー

第1研修部 津田俊晴

1.はじめに

中学校の確率・統計の指導は,記述統計を基礎にして,推測統計の考えを進めていくことがたいせつであるといわれている。

そして,そこでの指導のねらいをまとめると,次の<1> ,<2> になる。

 <1> 実験をとり入れ理論と実践の融合を考えさせる。
 <2> 個々の手法そのものより広い見方や考え方,処理の仕方を学習させる。

i,e,行動への態度決定に役立つようにすることをねらっているといえよう。

このねらいを達成する効率的な教材展開を求めるための方向づけとして,An Introduction to Probability Theory and Its Applications(William feller)の考えに従って,偶然変動の記述の仕方と確率modelの応用について検討してみよう。

2.偶然変動の記述

(1)現象の記述

現象を数学的に記述するには,その現象を理想化しなければならない。

(例)

硬貨を投げたとき,必ずしも表か裏が出るとはかぎらない。ころげていってしまうこともあるし,また縁で立つこともあってよい。それにもかかわらず,この実験で起こり得る結果は表と裏にかぎると老える。

<1> 実験

実験は,現象の理想化の仕方から,次のように分類することができよう。

例のように・実験で起こり得る結果について,ある約束をするものとしては,

「1つの画鋲投げ。」…………実験ア


実験イ のような回転している的に弓の矢を当てる。」………実験イ

などがあげられる。

必要な結果だけ起こるように実験をcontrolするものとしては,


実験ウ からrandomに1個取り出す。」………実験ウ

「1個のボールを2つの箱にrandomに分配する。」………実験エ


などがあげられる。

<2> 関心の結果空間

<1> の実験例において,起こり得る実験結果(理想化した)をa,b,とすると,実験は,集合{a,b,}と記述されるので,{a,b,}を自然的な標本空間と呼ぶことにする。

次に,問題となるのは,実験結果の何に関心をもつかということであろう。

そこで,実験結果aの生起回数に関心をもつとすると,1回の実験は集合{0,1,}で記述される。この意味で,{0,1,}を関心の結果空間と呼ぶことにする。

ここで,注意すべきことは,

関心の結果空間

となることで,i,e,1つの関心の結果空間がいろいろの異なった意味に解釈でき,標本点の性質は理論と無関係であるということである。

もっとも,確率を有効適切にきめることは,どの場合も同じというわけではない。

(2)確率model

まず,実験的見地からみてみよう。

1つの画鋲投げの実験において,起こり得る結果(理想化した)の一方をaと名づけ,画鋲をn回投げるとそのうちaがx回出たとして,自然的な標本空間の標本点aに与える重さ

θの推定を例にとって考える。


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