福島県教育センター所報ふくしま No.16(S49/1974.6) -012/025page

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回数nが非常に大きいときは,相対度数x/nでθを推定するのが合理的であろうが,nがいくらより大であればθを推定でき,それ以下では推定できないという限界を与えることは困難である。

したがって,実験的には,試みの回数がn 1 であるとき,n 1 <nになるnを回数とする有限な系列を考察の対象とすればよい。

そこで,情報を極端に少なくして2回投げるとして,相対度数による推定結果 数式1 とBayesの推定による結果 数式2 を比較してみる。

比較表

この比較から,実験回数nが小さいときは,相対度数による推定よりBayesによる推定の方が実験の解明に役立つ確率modelを得るといえよう。

以上の考察から,自然的な標本空間の標本点に与える重さの定め方は,次のようにまとめられる。

 <1> 重さの定め方は,確率測度の定義を満足すればよいから無数にある。
 <2> 無数にある定め方の中から,有効適切なものを選べばよい。
 <3> 有効性の評価は,得られた確率modelがもとの試行の解明にどのように役立つかによってきまる。

次に理論的見地からみる。

確率modelが実際の経験に無理なく合っているかどうかは応用される現象の型によるから,ある場合には物理的考察によって等しい重さ(標本点に与える)を仮定し,他の場合には,たとえおおまかな第1近似にすぎないことが明らかでも,一般的な方向づけのため一番簡単な数値を重さとして導入すればよい。

したがって,理論では,標本点の重さは与えられているものと仮定してよいことになる。

(例)

2つの硬貨を1回投げる実験を記述し,確率測度を誘導する。

表をa,裏をbであらわし,自然的な標本空間の各標本点に重さ4分の1を与え,表の出る回数に関心があるとする。

関数図

図のように関数 文字2 を定義し,関数gは 文字2 (s)=r, 数式3 であるとき 数式4 の元の重さの和をr に割り当てるものとする。

このように,関数gを定義すると,gはRの上に確率測度を誘導する。

そして, 数式5 なるXを確率変数, 数式6 を確率密度関数と呼ぶ。

(例)

2つの画鋲を1回投げる実験を記述してみる。

それには,上の例の自然的な標本空間Sの標本点の重さを,この現象にあうようにかえればよい。

そこで,「新しい 算数-数学へのアプローチ(日本放送出版協会)」のP.147より,実験結果を引用する。

画鋲絵 上向き(a) 画鋲絵 下向き(b)意味で,

1つの画鋲を50回投げたとき,上向きが23回出たとなっていたので,aに与える重さをBayesの推定できめる。

数式7

したがって,

確率model

なる確率modelを得る。

3.確率modelの応用

確率modelを統計的処理にどのように応用するか,これを知ることは教材の展開を考える上でたいせつなことと思う。

それで,典型的な問題を取り上げ,確率modelから一般的傾向を推測し,その推測がどれくらい信頼できるかという程度について考える。

(1)超幾何分布

「壷の中に赤球m個と白球n個が入っている。


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