福島県教育センター所報ふくしま No.16(S49/1974.6) -014/025page
中・高共通教材 ー英語学習における「読む」指導の展開ー
第1研修部 鈴木 均
1.はじめに
英語学習における「聞く・話す」指導の展開については,本報第2号において所見を述べたつもりである。そこで,今回は英語学習における「読む」指導の展開について考えてみたい。
英語学習は,Language is primarily speech.という音声言語尊重の立場から,一般に文字を媒介とする読み,書きの指導は,英語の基本的な語・句・文についての音声面の指導がなされた後に行なわれる。特に中学校入学当初の10時間前後は,入門期と称して,音声面の指導に全力が注がれ,生徒はもっぱら英語の基本的な発音面……Pronunciation,stress,rhythm,intonation,など……についての訓練をうけ,さらに音と意味の密接な連結(fusion)ができるように指導を受ける。
このような入門期の指導を受けた生徒に対して,文字を媒介とする読みの指導が始まるのであるが,このことは,「音-意味」の連絡から「文字-音-意味」の連結へ移行することを意味する。しかもこの間の移行は生徒にとって,想像以上に困難なものであることに留意する必要がある。もしこの間の橋渡しが十分になされないと,この段階で多くの落伍者を出したり,生徒間の能力差をいっそう拡大させたりすることになる。
2.「読む」指導の目標
一般に,「読む」ということはどのような作業活動なのであろうか。Webster's Third New International Dictionaryには次のように定義されている。
read:(1)to look at or otherwise scan(as let-ters or other symboIs representing words or sen-tences)with mental formulations of words or sen-tences represented;(2)to form with the lips or utter aloud(such mental formulations);(3)tounderstand the meaning and grasp the full sense of(such mental formulations)either with or with-out vocal reproduction……
Webster's 3 が‘mental formulations’という理解反応過程のもとに,黙読(silent reading),唇読(lipreading),音読(reading aloud)をあげ,ついで明確な発声(vocal reproduction)を伴っての内容理解と発声を伴わない内容理解をそれぞれあげているのは,「読み」の心理や形態を細かく考察し定義したものと言える。もっとも,Webster's New World Dictionaryは,‘read’を‘to get the meaning of(something writ-ten,Printed,etc.)’と,‘to utter aloud(printed or Written matter)’の2つに簡潔に割り切って定義している。
さて,ここで英語学習としての「読む」指導の目標としては,どのようなことがあるか,考えてみよう。
中・高の段階では,どんな英文でも楽に読める力を期待することは無理である。語い・文型・表現などの面で適当にcontrolされた英文でなければならない。また,読むということは,書かれた文字をただ音声化することではなく,そこに盛られた意味・内容を正しくは握することであり,しかも余り時間をかけずに,できるだけnormalな速度で読み取る必要がある。さらに,読み取った内容について,おもしろかったとか,自分もそのようにしてみたいとか,こんなことは初めて知ったとか,何か感じを持つことが大切である。
このように考えてくると,英語学習の「読む」指導の目標は,「制限された語い・文型・表現で書かれた英文の意味・内容を正しくしかもできるだけnormalな速度で読み取り,脳裡に何らかの反応を覚えること」としてまとめられよう。黙読は音読の2倍の速さがあり,速く読むためには,黙読がよいが,中学校の段階では,「聞く・話す」領域と「読む」領域が密接に関連しており,音読(reading aloud with comprehension)を中心に展開していくことになる。
3.「読む」指導の発展段階
ここで,「読む」指導の展開を,4っの段階に区切って,もう少し具体的に考えてみよう。
(1)「読む」指導の準備段階(Prereading)
R.Ladoはこの段階における作業として,‘Preread-ing’と‘Fit’をあげている。
Prereadingとはalphabetの文字を識別することである。alphabetの個々の文字の発音指導については,その必要性の有無を含め,さまざまな意見が聞かれるが,その指導は,文字の識別ができるかどうかをcheckしたり,学習すべき音の発音指導を円滑にする上からも役に立つものである。形の類似しているもの(b-d,c-e,i-j,m-n,m-w,v-w,P-p,C-G,E-F,U-X),発音の類似しているもの(b-v,g-z,j-g,m-n)などをflash