福島県教育センター所報ふくしま No.16(S49/1974.6) -015/025page
Cardなどを用い正しく速く識別できるように指導するのがこの段階のねらいである。
この段階におけるもう1つの作業にFitというものがある。これは口頭練習により習得した音声と,いくつかのaIphabetの文字からなる語を結合(fit)させる作業である。Fitの作業の際,大切なことは,alphabetの文字そのものの発音と,語としての文字の発音は無関係ではないが,両者は異なっていることに注目させることである。また更に大切なことは,文字と音のほかに,そこには意味があることを常に認識させることである。文字-音-意味の密接な連結を作りあげていくのがこの段階でのねらいである。
例えば, capを教える場合,絵とか実物などを用いて音と意味の連絡を十分にはかった後に,capという文字を提示し,文字と音との連結,すなわちc-a-pというalphabetの文字が1語となって と発音されることを理解させるのである。そして絵やflash cardなどを組み合わせて,文字-音-意味が密接に連結し融合するまで練習を続けていく。その際,比較的導入しやすいもの(pen,bed,hat)から,複数のalphabetが1音(one phoneme)を表すもの ,同じalphabetでも置かれた環境によって発音が異なるもの ,綴りが同じであっても発音の異なるもの ,綴りが異なっていても発音の同じもの ,連結子音 ,黙字 などへと基本的な綴りと音の関係を徐々に理解させていくことが望まれる。
(2)「読む指導」の第I段階(Reading what is Spoken)
この段階は,耳と口を通して言えるようになった発話(utterances)を,今度は文字を見,文字を1つの刺激として,すぐに正しく音読できるように指導することが中心となる。その際・意味・内容が脳裡によみがえってくるように指導することが大切である。口頭でその場にふさわしい発表ができても,それを文字を通してnomalな速度で正しく音声化していくことは非常に困難なことである。文字を識別しそれを音声化することに気をとられるあまり,stress,rhythm,intonationなどがくずれ易くなるばかりでなく,文字の背後にある意味・内容をしっかりは握するところまでいかない事態をしばしば経験する。例えば,What a nice camera you have!という文を音声化する場合,生徒はこれら5つの語を同じ強さで等間隔に,日本語のsyllable-timed rhythmを転移させ,感嘆文の意味・内容をもは握せずに,平担に読んでしまう傾向がある。
また,いままで口頭で練習したものを文字を通して音読するこの段階で,生徒が意外に思うことは,それまで音の連続としてとらえていたものが,いくつかの語から成り立っているということである。一般には,音声上の結びつき(linking)の問題になると思うが,十分に注意をしておきたい。例えば, がThank you, がAll rightと表されることからはじまり,
などの子音十母音,子音+子音の連結などの指導にも注意を向けるのである。
さらに,目で読み取る範囲(eye−span)の拡大もこの段階の大きな仕事である。a pretty little girl,sit down,on the benchなどの語句を書いたflash cardを利用したり,またA pretty little girl sat down onthe bench.のような文をOHPによってflashさせ,M.WestのLook up and Sayの方法なども試みながら効果の上がる工夫をしていきたい。
(3)「読む」指導の第II段階(Speaking what is Written)
J.B.Carrollは,読みとは話し言葉への再構成であると述べている。R.Ladoの‘speaking what is writ-ten'の考えにあたる。即ち,この段階において取り扱う読むための教材は,前もって口頭で習得されたut-terancesがその要素となっているかも知れないが,全く同じものではない。口と耳を通して習得した文型・語いなどを含むutterancesが,別の新しい環境の中でdynamicに組み合されて書き示されているのである。このような教材を,文全体の流れの中で,意味・内容をは握しながら,それにふさわしいstress,rhythm,in-tonationなどを補って‘utter out'をしていく,いわゆる‘productive reading'がねらいなのである。したがって,この段階では,第I段階のmodel readingをよく聞き,それをまねて音読することが中心であった学習から,新出の語・句・文型などの理解・運用の練習がすんだ後で,生徒自身が積極的にmodel readingへの道を切り開いていくような態度を養成していくことがねらいとなる。
一例をあげるならば,まず新教材の導入の後に,教科書を開かせ,生徒各自に小さな声で音読させ,そこに盛られている意味・内容をは握させるのである。この場合,理解できない箇所に出あっても,日本語に訳して考えさせることは極力さけ,その箇所をもう1度最初から読み返して,直接英語から意味・内容をは握するように指導することが大切である。このようにして,クラス全体の個人読みが終わったところで,1文ずつmodel readingを聞かせ,その都度生徒自身が予想していた読み方と一致していたかどうかをcheckし,また何故そのような読み方がよいのか,意味・内容に即しながら生徒に聞きただすのである。例えば,Whose book is this?に対するIt's my book.においてmyにstress