福島県教育センター所報ふくしま No.16(S49/1974.6) -016/025page
がおかれたのはなぜかとか,What a big dog that is!とはどんな気持で言われたものか,またI can't go with you,now.My mother has gone out shopplng.という2つの文の間には,内容面についてどんな関係があるかなどに注意して指導をしていくのである。
このようにして,この段階では,意味・内容の理解を伴うproductive readingを目指すのであるが,その一般的な手順は,まず新教材の語・句・文型などを理解・運用させ,次いで本文全体の意味・内容を理解し,その後でそれにふさわしい音読のあり方を,範読,一斉読み,個人読みなどを通して展開することになる。換言すれば,この段階の活動は,すでに十分理解した内容を話しことば化し,一種の創造活動として表現させるものであり,ひいては発表力を養うことにもなるので,その意義は大きい。
(3)「読む」指導の第III段階(Reading for infor-mation)
この段階は,「読む」指導の最終段階であり,主として高校の段階に入ってから展開されるものと考えられよう。黙読をふまえた内容理解に重点がおかれ,その内容としては,Paragraphとかstory全体の大意をつかむgist readingの指導と,できるだけ速く読み取るnat-ural readingの指導になる。1つ1つの文の理解はできても,それが有機的につながりをもつparagraphとなった場合,そこにある意味・内容とか主旨(theme)などをは握することができなければならないし,また,いくつかのparagraphが集まって1つの文章を構成した場合,その文責全体のideaとかthemeを読み取ることができるように指導をするのがねらいである。
先に,「読む」指導の目標として,「・・・英文の意味・内容を正しくしかもできるだけnomalな速度で読み取り,脳裡に何らかの反応を覚えること」をあげたが,I.Morrisも「読む」指導の最終目標は,‘con-centration on the information rather than on the medium of expression’であるとし,書き表されている言葉そのものよりも,内容や情報のは握に注意が向けられなければならないことを強調している。また,M.Westは,‘A boy will read very much faster when he is expected to be questioned on the bare outline than he expects a cross examination on the details.'と述べ,細かな文法的な質問や詮索は,その文のoutlineを求めてよむ速読のためにはよくないことを指摘している。David P.Harrisは100〜250語からなる英文に対しては,gist readingの場合,4〜7くらいの質問を通して,意味・内容の理解をcheck していくのが最も適当であろうという資料を提供している。
このように,いわば,窓ガラス(medium of ex-pression)を意識せずに,外の景色(message)を鑑賞するようなreadingのlevelに至る道はたいへんにけわしく,多くの困難が横たわっているけれども,このことは,我々がreadingの指導をする場合において,念頭においておかなければならないことであろう。
ここで,translationのことについて少しふれておきたい。翻訳(transtation)は基本文型の暗誦の際,あらかじめその文全体の意味をは握しておくためには役に立とう。このことは多くの言語学者も認めてはいるが,同時に,活動としての言語そのものの学習の代用には決してならないことも指摘している。
もちろん,この方法は,英語表現を,それに対応する国語表現(翻訳)という媒介によって,理解するわけであるから,日本語と英語の対照がそれだけ明確化され,表現の隅々までにも注意が向けられるという利点はあるかも知れない。しかし,この利点はそのまま欠点にもなっていることに注意を向ける必要がある。即ち,理解に際しては,聴取(読書-翻訳-理解の経過をたどるために,それだけ理解の速さがおち,速い発話の聴取に困難をきたし,速読の妨げになると思われる。また,表現の一部の細かな翻訳にとらわれて,全体の意味・内容を見失う危険が大いにあるといえよう。更に,翻訳の国語表現にとらわれすぎて,英語を学んでいるのか,国語を吟味しているのか分からなくなってしまうことさえありうるわけである。言語の学習は,あくまでもfour lan-guage skillsの習得が基盤である。即ち,‘Proficiency in the target language includes the four skills:listening,speaking, reading,and writing,but not translation and interpretation.'であることを再認識しておきたい。
4.まとめ
以上,中学校・高校における「読む」指導の展開を4段階に分けて述べてみたが,この4つの段階は,read-ingのあるlevelに達するまでのone cycleとも考えられ,それぞれの学年の「読む」ための活動目標に照らして.このcycleが何回も繰り返されて,はじめて充実した指導が展開されることになる。
mim,memを伴った文型練習が,英語学習において,極めて重要な役割をもっていることには間違いない。しかし,英語教育の目標が,あたかも文型指導そのものであるかのような錯覚に落ちいることは危険である。あくまでもcommunicationを目ざすものでなければならない。また安易な訳読のみに終始し,「読み」の学習を不活発にさせていないかなどについて常に反省を加え,意識的に「読む」指導を組織化し,訳読と文型指導の谷間に落ちこみがちなこの分野に対しても最適な効果があがるように努力をしていきたい。
なお次回,17号(8月発刊)においては,「書く」指導の分野について若干の考察をしてみたい。