福島県教育センター所報ふくしま No.16(S49/1974.6) -017/025page

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小学校教材

カ  ビ  の  観  察

ー実験方法の改善を中心としてー

第2研修部 本田 孝

はじめに

6年生の”カビ”の学習で,ある教科書におよそつぎのような文がのっている。「カビのつくりはどうなっているだろうか。ルーペやけんび鏡で見ると,白い糸のようなものがパンの表面をおおい,ところどころから が出ている。そのえの先には,色のついた球のようなものがついている。この糸のようなものを きんし という。きんしは,細ぼうが1列につながってのびている。このきんしからえが出て,その先にまるいつぶがついている。このつぶが ほうし とよばれるものである。ほうしの色はカビの種類によってちがいがある。」そして,カビの図が画かれている。

この文を読むと,カビについて一応の認識を持つ者はどうにか内容がわかるが,カビそのものを正しくとらえていない(観察していない)児童にとっては,何のことやらさっぱりわからないはずである。これは,実験の中でカビをよく観察することによってだけ理解できることである。

ところでわれわれは,授業の中で,パンなどに生えているカビをそのままルーペや解剖顕微鏡等で観察させたり,または,カビを針やピンセットではぎとり,スライドガラスにのせて顕微鏡で観察させるという方法だけで,観察を終わっている場合がないだろうか。

これらの方法だけでは,カビの概観はとらえられても上記の教科書にあるような内容を理解するだけの観察はたいへんむずかしい。

指導要領には,(1) ,葉緑体をもたないカビやキノコなどは,でんぷんをつくらないで,他のものから養分をとって成長し,また胞子でふえること。とあるが,この目標を達成するためには,

○カビは,養分のある物によく生えるという状態と,
○胞子が発芽したりのびたりして,えができ胞子がつくられる状態を正しくとらえさせることが重要である。

ここでは,特別な設備を必要とせず,誰でも簡単にできるカビの培養のし方や,カビのプレパラートの作り方について述べてみよう。

1.パンを使って,各種のカビを育てるのがまず最初。

食パンを1枚,適当な大きさに切ってシャーレに入れこれに,パン全体がほどよくしめる程度に,5%の砂糖液を作ってかけ,20〜30分間そのまま空気中にさらしておく,この間に空気中に飛散しているカビの胞子が,パンに付着する。その後ふたをして,25 c程度に保温する。(冬期間以外であれば室温でも可)4〜5日もすれば,パンの表面にクロカビやアオカビ等が一面に生育する。

図-1
                 図-1

2.パンに別の栄養分を加えるとカピの生育も変わる。

前記の方法は,ごく一般的な方法で,栄養分として砂糖を使ったが,ジャガイモやニンジンの煮汁を使うと,生育の様子が変わってくる,つぎに述べるのは,栄養分の条件をいろいろ変えて,生育状態を比較したものである。

(実験条件) <1> パンの大きさ,4×4×1(cm)

<2> 実験区 A  10ccの水でしめらす。
         B  5%の砂糖液10ccでしめらす。
         C  lOccの**ジャガイモの煮汁でしめらす。
         D  lOccのニンジンの煮汁でしめらす。
         E  ジャガイモの煮汁で5%の砂糖液をつくり,10ccかけてしめらす。
         F  ニンジンの煮汁で5%の砂糖液をつくり,10ccかけてしめらす。

<3> A〜F のパンをそれぞれシャーレに入れて殺菌*する。

<4> ニクロム線耳(図-2)を焼いて殺菌したあと,前記1のカビの胞子をつけ,パンの表面に3点ずつ植えつける。

<5> 約25 cに保温する。

*蒸器中で100 cで30分ずつ2日〜3日殺菌する。

**1リットルの水に,ジャガイモをできるだけうすく切ったものを200g入れて,20分ほど煮たあと,ガーゼでろ過して,ろ過汁が1リットルになるまで水を加える。この水は蒸溜水ならたいへんよい。ニンジ


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