福島県教育センター所報ふくしま No.17(S49/1974.9) -002/026page

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学習指導の最適化をはかるための手だて

小 学 校 教 材

説 明 文 の 読 解 指 導


低学年教材の分析を中心として

第1研修部   高 野 弘 道    

1.はじめに

 説明文はある事実や事象についての知識や情報を相手に伝達し,理解させることを目的とした文章である。そのため,説明文の読解にあたっては,文章に表現された事実や事象を正確に速く読みとるために,技能面の指導を重視するようになってきた。また,一方では,論理的な思考力を育てるという面からの指導のあり方が問題にされるようになってきた。そのため,助詞,指示語,接続語,修飾と被修飾,文と文との連接関係などの指導をするということが一般的な考え方のように思われる。

 もちろん,この考え方に異論はない。しかしそのためにややもすると技能中心の指導に陥り,学習が形式化していく傾向について,果たしてそれで正しい読みの指導といえるかどうかという疑問を持つ。

 教科書に取り上げられている説明文教材をみると,そんなにむずかしいことが説明されているわけではないし,また,複雑な構成で文章が書かれているわけではない。使われている語句や文の理解も,文学的文章に比べればさほど抵抗はなさそうである。とするならば,叙述の展開に即して段落ごとの要点をひろい出し,全体をまとめることで学習が終わってしまいそうである。教師にとっては特別な指導を考えることはないだろうし,子どもたちにとっても読んでわかったというだけで,特別の興味もわからなければ,未知のものを発見する喜びを感じることもできそうにない。

 つまり,「読んでわかったこと」として文章に述べられていることがらを順序だてて取り出していくだけでは,読み手である子どもたちに知識の拡充は望めても,主体性や創造性を期待することは無理ではなかろうか。 このような観点から,説明文の読解指導でねらう「正確な読みとり」の指導のあり方について,低学年の教材分析をとおして再検討してみたい。

 

2.指導上の問題点

 

  なつの おわりごろに なると,すずむしや まつむしが なきはじめます。

  すずむしや まつむしは,のどから こえを だして ないて いるのでは ありません。

  せなかの はねを すりあわせて きれいな おとを だしているのです。

(東書 1年)    

 この文章は,「むしのはなし」という教材の一部である。説明されている内容の読みとりとして,次のような一問一答式で学習が進められていったらどうであろう。

 T すずむしやまつむしは,いつごろからなきはじめますか。

 C 1  なつのおわりごろからです。

 T  すずむしやまつむしは,どのようにしておとをだしますか。

 C 2  せなかのはねをすりあわせて,おとをだします。

 T この文童でどんなことがわかりましたか。

 C 3  すずむしやまつむしは,はねをすりあわせておとをだすことがわかりました。

 教師の発問に対して,子どもたちは1年生なりに書かれていることがらを間違いなくおさえているように思われる。しかし,これで「何について,どんなことが説明されているか」を表現をとおして正しく読みとったといえるだろうか。おそらく授業は,読みの速い特定の子どもの発言によって,ごく短時間で終わってしまいそうである。

 正しく読みとることの例として,この文華でただ1箇所,主観的な述べ方をしている「きれいなおとをだして


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