福島県教育センター所報ふくしま No.17(S49/1974.9) -003/026page
いるのです。」という文のとらえ方に視点をおいて考えてみよう。「きれいなおと」を「うつくしいおと」におきかえただけでは,すずむしやまつむしのあの繊細で微妙なおもむきのある澄んだ音色を理解したことにはならない。ほとんどの子どもたちは,秋虫の音色を耳にした経験を持っている。その生活経験とからみ合わせながら話し合いを進めれば,どの子どもも積極的に学習に参加しながら,すずむしやまつむしの「きれいなおと」のイメージを鮮やかに描き出すことができよう。
さらに,「きれいな」という語句を手がかりにして,作者の意図や感動に迫ることもできそうな気がする。すずむしやまつむしを説明することがらとしては,「体のつくり」「えさの食べ方」「産卵の様子」なども考えられる。しかし,作者は子どもたちの興味をひきそうないくつかのことがらの中から,なぜ「おとのだしかた」を選んだのか。そのことを理解するためには,「きれいな」という表現にこめられた作者の気持ちをさぐることがだいじになってくる。何の理由もなく「おとのだしかた」が選ばれたわけではない。それを文章化しようと意図したかげには,素材に対する作者の情感がはたらいているのである。
ここまで読みを深めることが可能になれば,説明文の読解は,単に書かれていることがらをひろい出すだけではなくなってくる。この他に「Aではありません。Bなのです。」という文と文との関係,「なく→こえ→おと」という説明の展開のしかたなどの指導も考えられる。以上の観点から,この教材では次のようにまとめることができる。
(1)作者はすずむしやまつむしをどのようなものとしてとらえているか。
(2)それは文責のどこに表われているか。
(3)すずむしやまつむしの特性の中から,何をとり出して伝えようとしているか。
(4)それは作者の意図や感動とどうかかわっているか。
(5)とり出したことがらをどのように相互関係(論理)を整えて述べようとしているか。
(6)この文章からわかったことはどんなことか。わからないこと,もっと知りたいと思うようになってきたのはどんなことか。
以上のようなことを,文章表現をとおして追究していく訓練をするのが,国語科における説明文読解指導のねらいではないかと思う。
3.教材の分析
「たんぽぽのちえ」 (光村 2年)
(1)教材について
1.この文章は,たんぽぽが花を咲かせてから種になって散っていくまでの変化の様子を説明したものである。その述べ方は,読み手にわかりやすいようにという配慮から,事実→理由,事実→理由の順序をふまえている。さらに時の経過を表すことばや接続語,呼びかける形の文を適切に用いながら,変化していく過程を書き進めている。
文章の特徴は,擬人法による表現形式をとっている。たんぽぽの花が種になっていくまでの様子をたんぽぽの側からいきいきととらえることによって,説明文を正確に読みとる技能を身につけていくことにもなる。2.作者は子どもたちにとって身近な植物−−親しみやすい素材をとり上げ,そこから自然をみる目を育てていこうとしている。何気なく見すごしがちなたんぽぽが,新しい仲間をふやすために独特な成長をしていく様子について叙述している。そこには,ふだん気のつかない自然の摂理を知らせたいという作者の気持ちがにじみ出ている。
3.子どもたちはこの学習をすることによって,自然とはこういうものであったかという驚きを持つとともに,自然に対する興味をいっそうましていくであろう。このことは読解指導と読書指導との関連を図る上で,だいじな指導のポイントになるものと考えられる。
(2)文筆の構成について
・○で囲んだ数字は形式段落の順序を示す。
・本文は敬体文で書かれているが,紙面のつごうで常体文でまとめた。
文華の構成を学習指導と関連づけてまとめると,次のようになる。
1.学習の目標がはっきりする。
2.学習事項の見通しがつく。
3.指導過程を考える手がかりになる。