福島県教育センター所報ふくしま No.17(S49/1974.9) -005/026page
中 学 校 英 語 教 材
効果的な writing 活動への approach
第1研修部 中 沢 剛 太 郎
1.はじめに
Writing活動の本質
言語は聞くこと,話すこと,読むこと,書くことの過程をへて体得されるものである。従って書くことができるということは,ことばを聞いて意味がわかり,それを使って話すことができ,読んで内容を汲み取り,それを必要に応じて文字として再生できるということであって,書く力は他の三技能のいずれよりも高度の技能が要求される。母国語の体得と外国語の習得とでは,その過程における条件が異なるので全く同一的に考えることは早慮のそしりを免れないが,英語の writing 活動が,学習者にとって最も抵抗の大きい領域であることは,われわれ英語教師のつとに痛感しているところである。
A中学校の調査によれば73%の生徒が「書くこと」を不得意としているという。この事実を省察すると,言語活動ということばの image から,直ちに oral による communication を考えがちであって−もちろんそれは最も重要で basic な活動であるが Writing 活動がともすると片すみに押しやられたり, home work として安易に家庭学習にゆだねられたりした嫌いがないでもない。 各領域に調和のとれた学習を進めるために,writing 活動をもう一度見直して,その効果的な指導展開を research する必要があると思う。
2.writimg 活動の内容と要素
指導要領では「書くこと」の言語活動を次のように明示している。
・語,匂および文を見て書き写すこと。
・文を聞いて書き取ること。
・身近なことについて文を書くこと。
・日本語の文の意味を英語の文に書くこと。
・行なったことなどを文に書くこと。
・行なったことや考えたことなどを文に書くこと。
・日記形式および手紙形式の文を書くこと。
これらは大別すれば,copying,spelling,dictationcomposition の要素から成る。逆にいえば,これらの要素を身近な生活の中で,外国語学習の目標にそって展開することが,書くことの言語活動である。しかしwriting が他の領域に較べて高度の技能を必要とすること,そして他の領域よりも初歩的段階の要素が多いことから,書くことの言語活動は多分に学習活動的要素を含んでいることに注目しなければならない。従ってここでは communication の立場からばかりでなく,広義の活動として writingをとらえてみたい。
3.writing 活動の展開
(1)copying
M.Rivers は次のように述べている。「copying は迫力のない作業だという意見もあるが,この考え方は不適切である。他の言語は生徒にとって見なれないものであるが,その言語で自信をもって書くようになりたいなら,それに充分なじむ必要がある」と。つまり字になじみ,適確な copying ができることによって,英語学習の目標の一つである「外国の人の物の見方や考え方を理解する」に一歩 approach することになるわけで,copying は,writing 活動の一分野として軽視されるべきものではないと考える。
1 活動の進め方
ア 開始の時期 入門期の oral work が一段落し, text による学習の始まる頃
イ 字体 text と並行した活字体あるいはこれに似た block 体から入り,漸時筆記体に移行する。
ウ 手順
・書写の材料を oral で学習し,適確な読みを行なう。
・copy しながら教材について発声の drill をする。
・暗写のための copying を行なう。
2 指導上留意すべきこと
機械的書写作業に終始させては,効果は半減するので次の点に留意し,習慣づけるようにする。
・正確で speedy に書かせる。
・音声と字を連結させる。
・語は一字ずつでなく,全体を見たあと一気に書かせる。
・文字と綴りの規則性に気づかせる。(例)qu−,−ing
・語,句,文は意味内容をは握した上で書かせる。
(2)spelling
A中学校の調査では,Writing を不得意とする生徒のうち,39%の者が「spelling が覚えにくい」を理由としてあげている。生徒にとって spelling を覚えることが production 活動の前に横たわる最大関門であろうが,これを一概に生徒の drill 不足といい切る前に適切な指導方法や手順を考えるべきであると思う。